
出口 治明
-
『ロレンスがいたアラビア』
ロレンスがいたアラビアには、他にもロレンスと同じような境遇の尖った若者がいたのだ。アメリカ人イェール(スタンダード・オイルの情報員)、ドイツ人ブリューファー(学者でスパイ)、ユダヤ人アーロンソン(シオニストのスパイ組織の首謀者)である。本書は……more
-
『周―理想化された古代王朝』
2016年11月20日中国では、常に古代の聖天子の時代が憧憬される。伝説の堯や舜はともかく実在が確実視される周の文王や武王、周公旦の時代である。周は約800年続いたが、これまで意外なことに読みやすい通史がなかった。本書は待望の1冊である。…more
-
『子供の貧困が日本を滅ぼす』
2016年10月21日子どもの貧困がよく話題に上るが、その実態を知っている人は意外に少ない。本書は、日本財団子どもの貧困対策チームがまとめたものであるが、この問題の「鳥瞰図」がとてもよく分かる好著だ。ぜひ、一人でも多くの皆さんに読んでほしい。…more
-
『すべての見えない光』
2016年10月04日本書は、パリの博物館に務める優しい父のもとで育った目の見えない少女マリー=ロールとドイツの炭鉱町、ツォルフェアアインの孤児院で育てられた少年ヴェルナーの一瞬の魂の邂逅を描いた珠玉の小説である。…more
-
『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』
2016年10月01日外来種と言えば、琵琶湖の在来種を脅かすブルーギルやブラックバスが脳裏に浮かぶ。いかにして駆除するか、心ない放流を食い止めるか。獰猛な外来種から琵琶湖の自然を守れ。確かにそうだと思う反面(因みに、僕は琵琶湖の外来種の駆除にはずっと賛成している)……more
-
『アイルランドの至宝 ケルズの書―復元模写及び色彩と図像の考察』
2016年09月29日渾身の書である。1938年に生まれた著者は、55歳でアイルランドを訪れて、「世界で最も美しい本」(ケルズの書)に魅せられた。その頃、テンペラ画を習い始めていた著者は、ケルズの書の全装飾ページ22葉の復元模写を思いつき、15年間6088時間をか……more
-
『図説シルクロード文化史』
2016年08月27日19世紀の後半、リヒトホーフェンが命名したシルクロードは、実は絹の道ではなく、移住する人々の手によって思想、技術、芸術的モチーフなど東西文化が伝播するスーパーハイウェイだったのである。 …more
-
『呉越春秋 呉越興亡の歴史物語』
2016年08月11日「呉越同舟」という諺が人口に膾炙しているように、春秋戦国時代の呉と越は宿命のライバルであった。両国は30年以上に亘って激しい戦いを繰り広げ、遂に越王勾践が呉王夫差を敗死させる。本書はこの2国の興亡を描いた歴史文学(東漢=後漢の時代に成立)の本……more
-
『中国 虫の奇聞録』
古来、虫は生き物の総称で、万物が五つの元素からなるとする五行説に従い、中国では全ての生き物が五虫に分類されていた。羽虫(長は鳳凰)、毛虫(長は麒麟)、甲虫(長は霊亀)、鱗虫(長は龍)、倮虫(倮は裸に同じ。長は人間、特に聖人)である。昆虫はこの……more
-
『アフガン・対テロ戦争の研究―タリバンはなぜ復活したのか』
2016年06月26日本書は、地域の歴史を丹念に掘り起こしながら、個々の軍事作戦の細部に至るまで丁寧な分析を進めていく。当初、タリバンのリーダー、オマルは9.11に反対し、オサマ・ビンラディンをアメリカに引き渡そうとしていた(そのシグナルをアメリカは読み損なった)……more
-
『一人の詩人と二人の画家 D・H・ロレンスとニューメキシコ』
2016年06月19日本書は、ロレンス夫妻としばし生活を共にしたデンマーク人の画家(クヌド・メリル)の回想録であるが、これほど生身のロレンスの素顔を率直に表した評伝は稀であろう。著者はロレンスの言動をことさらに解釈したり評価したりしているわけではまったくない。絵を……more
-
『うた合わせ 北村薫の百人一首』
2016年06月12日子どもの頃のお正月は凧上げと百人一首。子ども心に好きだった遍昭の歌などは、そっと近くに寄せておいたものである。本書は、「隣の赤」など興趣をそそるタイトル50組のもとに其々2首の現代短歌を選び合わせて百人一首としたものである。定家が本書を手にし……more