
刀根 明日香
-
『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』
中国では「好死不如悪活」という言葉があり、変わり果てた姿になったとしても、死ぬよりは惨めながらも生きている方がよい、という意味らしい。中国で獄中20年4ヶ月耐え抜いた深谷義治さんとその家族の人生が、この言葉を体現しているようだ。もし、著者が父……more
-
世界地図のいろいろ『オン・ザ・マップ』
2014年12月17日地図に思いを馳せるーー残念ながら私はそんなロマンチストではなく、地図も全く当てにできない方向音痴だ。しかし、宝の地図や、新大陸と聞けば、やはりワクワクせずにはいられない。古代の人々にとって、地図とはそのようなものであった。南北アメリカが初めて……more
-
『天人 深代惇郎と新聞の時代』新聞が好きでたまらない連中が新聞をつくっていた
深代は、社の内外、国内外を問わず、実に人とよく付き合っていた。天声人語を書く日々の中でも、寸暇を割いて人と会っていた。横浜支局勤務に始まり、東京本社、特派員としてロンドン、ニューヨーク、さらに、朝日の大型企画「世界名作の旅」のコラムを書くため……more
-
絵筆を捨てて自然に学べ『子どもに伝える美術解剖学』
著者の布施英利先生が行う絵画教室はとてもシンプルだ。絵筆を置いて、自然へと繰り出す。そして自分のはらわたが疼くのを確認したら、素直に絵に描いて表現しよう。「そんなに簡単に言われても」、と困るかもしれないが、自分を表現するには、自然を目の前にし……more
-
わたしたちは星の材料でできている『あなたのなかの宇宙』
これほどの大発見を現在進行形で体験出来る人は、どれほど幸せだろうか。もしかしたら、宇宙の人間原理もエピジェネティクスもこれに匹敵する大発見かもしれない。そう考えると、自然科学の知識を普段から蓄えておくことが、その幸せを享受することの出来る条件……more
-
最もセクシーでクールな『ロボコン』
何ヶ月も続く緊張感とタイムリミットの重圧にもめげず、生徒たちが躍進する姿ほど心を打つものはない。宿題やテストなど上から押し付けられるものから解き放たれ、吸収したいものだけを全力で吸収し、間髪入れず実践に移せる喜びが彼らの身体中みなぎっているよ……more
-
本が導く「楽しい」のその先 『ROADSIDE BOOKS 書評2006-2014』
2014年06月25日ページをめくるたびに、心が強く突き動かされる本がある。少し時間が経つと、そのときの興奮や気づきが薄れてしまうものだから、何回も何回も読み直す。忘れた気持ちを拾い集めるために。都築響一さんが2006年から2014年の間に書いた書評を編んだ『RO……more
-
江戸の科学する心『江戸の理系力』
本書にはここには書ききれないほどの、世界初の発明が詰まっている。一つ一つの発明は、体系化された学問の集大成というよりも、日々の生活の知恵が共有された、集積の賜物なのである。川が氾濫するならば、一般的な河川学の知識ではなく、その川の特徴をよく知……more
-
『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』
2014年03月20日本書は特殊な状況にある特別な家族の話ではない。自分にとって大切な人を信じ、その人のために闘っている者たちをめぐる、普遍的な物語なのだ。…more
-
HONZ活動記 -合宿レポート@鬼怒川温泉
2013年12月11日ある日突然、成毛眞から号令がかかった。12月に合宿を行い、しかも今回は豪華にバスを貸し切るのだという。いずれにせよメンバー全員が、この日を心待ちにしていたことは間違いない。師走の金曜日の夕刻だというのに、誰一人として遅れることなく集合していた……more
-
『東洋の至宝を世界に売った美術商: ハウス・オブ・ヤマナカ』
「美術品の世界へようこそ!」と両手を広げて迎え入れてくれるのは、本書の著者、朽木ゆり子さんだ。朽木さんが描く、美術品の背後に渦巻く歴史の数々に、読者は息をつく暇もない。ノンフィクション特有の、頭の中に次々とわき起こる知的興奮で四六時中頭がいっ……more
-
『マチュピチュ探検記 ― 天空都市の謎を解く 』
2013年07月26日私が本書を読む前、マチュピチュは「アンデス山脈の頂きに建つ、精巧な石積みによるインカの遺跡」程度の知識しか持ち合わせていなかった。たしかインカ皇帝の財宝が隠されているとか……。現在この問いに対して、確かな答えは見つかっていない。あらゆる学者が……more
-
素晴らしき世界の食卓『小泉武夫のミラクル食文化論』
2013年06月26日「(4年目にして)授業に出て、勉強しよう」と思い立った矢先、就活が始まった。説明会や面接に時間をとられ、授業に出る暇もない。全くストレスが溜まる。鬱憤を晴らすために手に取る本は、小泉武夫先生の著書だ。就活なんて止めて、辺境に食べ歩きに出かけよ……more
-
あやつられたのは人間?『欲望の植物誌』
2013年01月25日人間の欲望をあやつる植物。気がついたら植物の虜となり、子孫繁栄のための奴隷となる。なんて怪しい。一体どんな色、形なのだろう……。 …more
-
『世界ふしぎワンダーライフ50』新刊超速レビュー
2012年10月14日写真集は人の個性を十二分に表す。写真家の個性はもちろんだが、それを手に取る読者の個性も赤裸々に映し出す。例えば、鰐部祥平は『朽ちる鉄』を手に取る。土屋敦は『温泉川』を手に取る。内藤順は『パイスラッシュ』を手に取る。それぞれどんな内面を写真集が……more