
首藤 淳哉
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HONZ in APU① 立命館アジア太平洋大学、そこは天空のキャンパスだった!
2018年08月06日「別府八湯(はっとう)」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれない。ひとくちに別府と言っても、主に八つの温泉で構成されており、なんとそれぞれの泉質が違うのだ。そんなユニークな温泉地に、これまたユニークな大学が誕生したのは、2000年のこ……more
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『消された信仰「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』世界遺産から黙殺された人々
2018年07月05日一時の熱狂的なブームは去ったとはいえ、世界遺産への登録実現は、観光客を呼びたい地方自治体にとっては悲願だろう。今回も2015年の申請では登録に至らず、資料の内容を修正した上で再挑戦し、登録へとこぎつけた。 実はこの再挑戦の過程で、不可解……more
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『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機
2018年06月11日ちょっと肩に力が入った状態で現場に向かったのだが、案に相違して、百貨店のバックヤードにある小部屋で待っていた山田ルイ53世は、あの良く響く美声と満面の笑みで迎えてくれた。もちろん怒ってなどいない。いや、言いたいことはあるかもしれないが、それを……more
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『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』不完全だからこそやってみる
2018年05月21日「大谷翔平」はどのようにして生まれたか。その秘密の一端を解き明かしてくれるのが、『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』だ。著者は大谷が15歳の時からコツコツと取材を続けてきたジャーナリスト。家族にも信頼されているようで、大谷家のリビングに招き……more
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『遅刻してくれて、ありがとう』加速の時代に「ほどほどの人生」をいかに取り戻すか
2018年05月14日本書でフリードマンが目をつけるのは、「加速化」だ。世界はいま信じがたいスピードで変化している。その速さは私たちの思考や制度が追いつかないほどだ。フリードマンによれば、その節目となった歴史的な年は2007年だったという。フリードマンはこの年以降……more
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『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』「真犯人」はなぜ封印されたのか
2018年04月24日あの日、あなたはどこで何をしていただろうか−−。1995年(平成7年)3月20日。警察担当の記者だったぼくは警視庁にいた。こんなふうに当時の記憶が一挙に甦ってきたのは、『宿命 警察庁長官狙撃事件捜査第一課元刑事の23年』を読んだからだ。平成の……more
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『経済学者、待機児童ゼロに挑む』難攻不落の社会問題への挑戦
2018年04月04日本書はみずからも待機児童問題に苦しめられたことがある経済学者が、行政の最前線でこの問題と格闘した経験を記した当事者ノンフィクションだ。問題解決のヒントが多数示されている上に、小池都政の興味深い内側も明かされている。読んで面白く、実践的なアイデ……more
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『アーカイブズが社会を変える 公文書管理と情報革命』事実の積み重ねが未来をつくる
2018年03月20日実はこの分野についてわかりやすく解説してくれる本は少ない。そんな中、多くを教えられた一冊が『アーカイブズが社会を変える 公文書管理法と情報革命』松岡資明(平凡社新書)だ。公文書管理法施行のタイミングにあわせて出版された古い本だが、非常に重要な……more
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『ルポ 川崎』リバーズエッジから見る日本の未来
2018年02月21日本書の取材のために著者は毎回、自宅から多摩川を渡って対岸の川崎へと赴いていたという。やがて行きつけの店ができ、そこで知り合った友人たちの紹介で次々と取材の輪がつながっていった。そして川崎が馴染みの街になるにつれて、そこで起きている問題が、自分……more
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『白鵬伝』矛盾の大きさが示す破格の器量
2018年02月05日いまもっとも話を聴いてみたい人物といえば、なんといっても白鵬である。昨年の九州場所を前に発覚した暴行事件以来、相撲界が揺れに揺れているのはご存知の通りだ。メディアはわかりやすい対立の構図を仕立て上げ、それぞれの陣営の応援団を買って出た関係者が……more
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『北朝鮮 核の資金源』国連制裁の最前線で、何が起きているか?
2018年01月15日『北朝鮮 核の資金源 「国連捜査」秘録』は、国連制裁の最前線で何が起きているかを当事者が初めて白日の下にさらした貴重な一冊だ。本書を読んで北朝鮮問題についていかに上っ面の知識しか持っていなかったかを痛感した。ここに書かれていることは、日本で暮……more
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『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』麻薬王は、誰もがみな名経営者!?
2017年12月21日「一般企業もマフィアもやっていることは同じですよ」 もしあなたが真面目なサラリーマンで、誰かに面と向かってこんなことを言われたとしたら、どんな反応を示すだろうか。おそらく内心ムッとするはずだ。そして「とんでもない! 反社会的集団と企業を……more
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『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』悪戦苦闘の中に見えてくる、選挙制度の問題点
2017年11月30日『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』は、選挙では毎度お馴染みのいわゆる「泡沫候補」たちの戦いを20年間にわたり追い続けたノンフィクションだ。これがむちゃくちゃ面白い。今年読んだノンフィクションの中でも出色の面白さだ。世間からキワ……more
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『降伏の記録』死へ向かう夫へのメッセージ
2017年11月20日「降伏の記録」という文章は、死へ向かう夫へのメッセージになっている。最終的に植本一子が辿りついたのは、夫と自分とは個と個の関係である、ということだ。夫は自分に向き合ってくれない、目と目を合わせてくれない、と思っていた。だがそれは、個と個で同じ……more
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『兵士を救え! マル珍軍事研究』戦場での赤い下着に効果はあるのか?
2017年10月06日軍事サイエンスの分野では、敵を攻撃するだけでなく、味方を守るための研究も熱心に行われている。本書には最新の殺傷兵器に関する研究は出てこない。本書が扱うのは、酷暑や疲労、大きな騒音や突然の下痢など、一見すると我々も日常生活で馴染みのある問題、け……more