
冬木 糸一
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言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』
2017年12月18日本書は、数学的原理に裏打ちされた傑作ファンタジィである『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』、その続篇『精霊の箱: チューリングマシンをめぐる冒険』とはまた違った物語──副題にもある通り、「人工知能の意図理解」についての一冊……more
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ゲームと共に生きる。『ゲームライフ――ぼくは黎明期のゲームに大事なことを教わった』
2017年10月25日ゲームはやりすぎると現実を侵食してくる。4つ同じ色の物が並んでいたら消えないかなと思うし、『GRAVITY DAZE』をやれば町中を飛び回る自分の姿をイメージし、『アサシンクリード』シリーズをやれば建物をどうやってよじ登ったらいいかを考え始め……more
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脳はいかにして現実を認識するのか──『あなたの脳のはなし: 神経科学者が解き明かす意識の謎』
2017年10月05日我々は"現実"をありのまま受け取っているわけではない。いったん視覚情報や触覚情報といった身体表面から情報を受け取り、それを脳で解釈することによってはじめて"人間用に最適化された、人間用の世界"を構築する。我々はある種のフィクションの世界を生き……more
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とてつもなく変態で、ありえないほど文章がうまい──『動物になって生きてみた』
2017年09月05日どうやったら、我々人間は動物の感覚にもっと近づくことができるのだろうか? たとえばアナクマのように巣穴で眠り、森を徘徊して獲物を物色する。たとえばカワウソのように水辺に住んで魚やザリガニを食べて生き、ツバメのように空を飛び、糞を撒き散らす。そ……more
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あなたは他者からどう見られているのか──『なぜ心を読みすぎるのか: みきわめと対人関係の心理学』
2017年08月25日人生には対人関係の悩みがつきものである。あの人は自分のことが嫌いなのではないか? あの人は何を考えているのか? など、解釈が難しいケースは多々存在する。基本的に人間は他者との関わりの中で生きていくしかないのだから「人間は対人関係を構築する時に……more
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肥満に至る道はひとつではない──『人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学』
2017年08月05日現在の人はかつてないほど太っている。1900年以前には肥満者は存在はしていたものの、多くはなかった。1700年代、1800年代のヨーロッパでは肥満者は珍奇なものであり、見世物にする人もいたぐらいだ。受け入れられ方も現在とは大きく異なっていた。……more
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すべてが調節されている──『セレンゲティ・ルール――生命はいかに調節されるか』
2017年07月05日本書『セレンゲティ・ルール――生命はいかに調節されるか』は、そうした生態系における個体数の調節機能から、人体および分子レベルでの調節機能まで含めて、この世界では『すべてが調節されている』という知識/ルールを解説していく一冊である。…more
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円城塔、田辺青蛙による夫婦読書リレー──『読書で離婚を考えた。』
2017年06月25日円城塔、田辺青蛙の小説家夫婦が、課題本を出し合い交互にエッセイ(書評)を連載することによって、夫婦の相互理解につとめる。そんなコンセプトではじまったWeb連載が、一冊にまとまったのが本書である。かたや理系で、わけのわからない極度に抽象的な小説……more
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二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』
2017年06月21日フラットランド。そこは二次元の世界。立体は存在しない、いわば紙の上の世界だ。 そんな世界にも住人は存在する。まず女性は直線だ。兵士や下層階級の労働者は二辺の長さが等しい三角形。中産階級は正三角形と、それぞれ形で身分が決定されている──そ……more
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ベストセラーを科学する──『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』
本書は、「ベストセラー小説に普遍的な法則は存在するのか?」という問いかけを、独自の判定モデルをつくりあげ検証した著者らによる一冊である。小説がヒットするかどうかは時の運という人も多いし、実際運が関与しない事象などこの世に存在しないともいえる。……more
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「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』
2017年05月05日前著『巨大ウイルスと第4のドメイン』などで魅力的なウイルス論、入門を書いてきた著者による最新作『生物はウイルスが進化させた』は、「生物」に対する見方を根底から覆す、最新のウイルス研究についての一冊だ。多くの野心的な仮説と、それは確かにそうかも……more
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犬! 飼わずにはいられない!──『ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー』
2017年04月25日本書はその名の通りに、極限レースを走った犬についての一冊である。極限レースを走った犬ってなんじゃそら、犬をわざわざレースに連れて行ったのか? そりゃ無茶だぜと最初疑問に思ったが、そういう話ではない。エクアドルで行われた、登山からサイクリング、……more
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シリア内戦の実情──『シリアからの叫び』
2017年04月05日いったい、シリアで何が起こっているのか。そもそもなぜこのような戦争が起きてしまったのか。そこで暮らす人々は何を考えているのか。本書はそうした疑問に答えるべく、政府軍、反政府軍、中立など立場を問わず、シリアの人々に対して寄り添うようにして行われ……more
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あの時、アメリカで何が起こっていたのか──『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』
2017年04月03日本書はそうしたハード戦争においてセガがまだ任天堂に対抗できていた一時代を、主にアメリカ(セガ・オブ・アメリカ、ニンテンドー・オブ・アメリカ、ほんの少しソニー)の視点から、数百のインタビューを元にストーリー仕立てで構成してみせた一冊になる。基本……more
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凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』
2017年03月08日本書は深いテーマを掘り下げていく類の本ではないからこれ一冊で全てがOKというわけではないけれども、その代わりに俯瞰的に宇宙の歴史をまとめ、宇宙の始まりから終わりまでを駆け抜けてみせる。「宇宙論の本って出すぎていてどれを読んだらいいのかわかんな……more