
冬木 糸一
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なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』
確かにコカインやマリファナといった薬物には"依存"はある。だが、世間一般に流布しているイメージは科学的に正確とは言い難いものだ。違法薬物による依存とはどのような種類の依存なのか? 依存に陥らない状況もあるのか? という点について、ただ闇雲に恐……more
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どこまでを人に任せるべきか──『デジタルアポロ ―月を目指せ 人と機械の挑戦―』
2017年01月28日本書は「人と機械がアポロ計画においてどう役割分担をしたのか(そもそも人に役割はあるのか)」という観点から、計算機開発やエンジニアリングを中心に、人間と機械の協働を分析した一冊になる。アポロ計画に関する本は山ほど出ているだけに、歴史や失敗も詳細……more
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世界をより鮮明に理解するために──『ホワット・イズ・ディス? むずかしいことをシンプルに言ってみた』
2017年01月05日すべての人間が一カ所に集まってジャンプしたり、光速に近いボールを投げたらどうなるか? といった現実的にはありえない質問に対して、ユーモアたっぷりのイラストと科学的に正確な解説を添え、愉快に物理や数学のおもしろさを体験させてくれた『ホワット・イ……more
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宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』
2017年01月02日近年イーロン・マスク率いるスペースX社を筆頭に、民間企業による宇宙開発が加速している背景があるが、本書は「宇宙倫理学」と書名に(聞き慣れない言葉だ)入っているように、そうやって人間が宇宙に出ていく際に不可避的に発生する倫理/哲学的な問いかけに……more
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不健康な脳から健康な心を推論する──『脳はいかに意識をつくるのか』
2016年11月25日近年fMRIなど新技術の出現で脳の活動がより精確に観測できるようになり、脳科学/神経科学は飛躍的に進歩した。そうなると気になるのは、我々が「意識」や「心」と言っているものはいったいなんなんだという問いかけである。幾つもの神経科学方面の本がその……more
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適切な移民政策とは何か──『移民の経済学』
2016年11月20日本書はテキサス工科大学経済学教授のベンジャミン・パウエルを編者とし、総勢11人もの執筆陣で、包括的に移民の影響、移民政策はどうあるべきかを詳細なデータ分析を元に論じていく。基本的にはアメリカのデータを用い、アメリカの移民政策はどうあるべきかを……more
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酒、悪態、怠惰、ストレスを肯定する──『悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる実験』
2016年10月25日時間は充分にあったはずなのに、締め切り間際まで仕事がはじめられない。ついつい悪態をついてしまう。酒を飲んではいけない時に飲みすぎる──いわゆる「悪癖」はままならない人生に常につきまとう影のようなものだが、本書はそこに切り込んで「実は、悪いと言……more
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宇宙における生命の普遍的特性──『生命、エネルギー、進化』
2016年10月05日細胞はなぜ今のような細胞なのか? どんな物理的要因が複雑な細胞を誕生させたのか? なぜ形態が複雑な生物は一度しか生じなかったのか? なぜほぼすべての真核生物に2つの性があるのだろう? なぜわれわれは老化したり、がんになったり、死んでしまうのか……more
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万物は進化する──『進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来』
進化はリドレーが長年扱ってきたテーマであってその点に不思議はないが、進化は万能である、といきなり言われても意味がよくわからずに最初戸惑ってしまった。とはいえ、読み進めてみれば何を言っているのかはだんだん了解されてくる。中心となっている主張は『……more
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読書会の楽しみが十全に詰まった一冊──『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』
2016年09月11日というわけで本書『プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』は、そんな無数の楽しみのある読書会を"男子刑務所で"一年間行ってきた著者のアン・ウォームズリーによる体験を綴った一冊になる。著者は囚人ではないが、月に一度開催され……more
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新時代への議論の基礎──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』
2016年08月25日副題に「人工知能時代の経済と労働の手引き」とあるように、本書は機械学習やニューラルネットワークなど各技術分野の進歩が著しいこの人工知能時代において、不可避的な失業問題にどう対処すべきか、機械道徳はどうあるべきか、AIの過失を法律はどう判断すべ……more
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虫だらけの惑星──『昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略』
本書はそんな昆虫が4億年以上にわたる期間で「どのように進化してきたのか」を記した昆虫の進化史録だ。読了後、道端でセミの死骸を見た時に「そう言われてみれば、こいつらけっこう凄いことしているよな」としみじみ思ったが、日常生活の中に溶け込んでいる昆……more
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史上最強のナード──『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』
2016年07月05日ゲイリー・ガイギャックスはこのD&Dを生み出した人物であり、本書はそんな偉大な男の伝記である。これがもう、めちゃくちゃおもしろい。その人生は波乱万丈。幼少期からゲームにのめり込んで高校は中退、仕事もゲームをやっていてクビになる。独創的なゲーム……more
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音による宇宙史の記録──『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』
2016年06月25日本書『重力波は歌う:アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』は重力波発見に至る経緯、検出のための観測所を組みあげるため奮闘した科学者たちの人生を通して重力波とは一体何なのかを解き明かしていく一冊である。現時点では重力波についての絶好の入……more
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剣のように強い力を持った本の記録──『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』
2016年06月05日本書『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』は「第二次世界大戦時に、強いストレスに押しつぶされそうになっている兵士たちの心を癒やすため、海を渡って兵隊らに行き渡った書籍」についての歴史である。この運動は市民や図書館といった多くの人の手によ……more