ハマザキ書ク 第一回 新刊情報収集テクニック

2011年7月17日 印刷向け表示
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HONZで毎月『ハマザキ書ク』コラムを寄稿させて頂く事となった、ハマザキカクこと社会評論社のブサカル変集者、濱崎誉史朗です。

 

私の編集者としての必殺技の一つが「選書」です。今まで通算九回の書店フェアを編集者「ハマザキカク」個人名義で開催しており、その都度フェアの趣旨に適った選書をしてきました。書店員の方々からはなぜその様に素早く、的確な選書が出来るのかと不思議がられます。またどの様な職業や趣味、バックグラウンドを持つ人に対しても、その人の関心分野に沿ったお奨めの本をその場で言い当てる事ができます。

 

なぜこの様な事が出来るかというと、毎日ほぼ全ての新刊のデータを集めて記録しているからです。HONZが新刊のお奨め本を紹介する集団という事で、今回の「ハマザキ書ク」では、いかに効率的に新刊情報を集めるか、そのテクニックを惜しみなく披露したいと思います。

 

 

先になぜ私が全ての新刊を記録しているか説明すると、編集者として今までに世の中に存在しなかった前代未聞の本、先行書、類書が存在しない本を企画する事を最大の目的にしているからです。これはつまり企画を始める前に、世の中に存在している本を先に認識していないといけないという事を意味します。従って毎日、出版されている書籍を全て把握していないといけないのです。

 

新刊情報の最大のソース源は「TRCデータ部ログ 日刊新刊全点案内 新刊一覧」です。毎日午後三時頃、200冊から300冊の新刊を配信してくれます。図書館流通センターがその日に登録した新刊を配信しているので、コミックやアダルト系以外の一般的な書籍はほぼ網羅されていると言っても過言ではありません。

 

http://feeds.feedburner.jp/TRCNewArrival

 

次に頼りにしているソースは「版元ドットコム」という中小出版団体の新刊データベースです。社会評論社も所属しており、否が応でも店頭で目に入ってくる大手の出版物とは違い、あまり平積みされる事もない専門書、学術書、マニア向けの本の多くがこの版元ドットコムの会員である出版社によって出版されています。

 

http://www.hanmoto.com/bd/shinkan/

 

そして次にチェックしているのが、「地方出版、少部数の本★新刊案内」です。地方・小出版流通センターが運営しており、上記の版元ドットコムよりも更に小規模の出版社の新刊情報を毎日配信しています。非常にニッチでレアな企画が目白押しです。

 

http://books-neil.seesaa.net/

 

これでおおよその一般書籍の新刊は漏れなく収集できるはずですが、それでも引っかからないマニアック本も世の中には沢山存在します。そうした新刊情報を補うのが新宿のカルト的な書店、模索舎の「模索舎.store」です。この書店は知る人ぞ知る究極のアンダーグラウンド書店で、一般書店には流通しない同人誌や政治党派の機関誌が置いてあります。

 

http://www.mosakusha.com/newitems/

 

模索舎と似たような存在で、よりアート・サブカル寄りのタコシェという書店があり、そのブログも同人誌クラスの新刊の重要な発信源です。

 

http://tacoche.com/

 

そしてこれらのデータベースのチェックを必ず怠らなかったとしても漏れは出てくるので、それを補うのが各種Twitterアカウントです。

 

「本が好き!BOOKニュース」は成毛眞ブログファンであれば、感性が一致するようなちょっとマニアックな人文書や理系書の新刊を、機械的なbotではなく運営者のセンスと判断で報告してくれます。

 

http://twitter.com/#!/honzuki_news

 

言わずと知れたマニアックな品揃えで定評のある書泉グランデや、有隣堂ヨドバシAKIBA等もいち早くその客層に合った新刊をTwitterで配信しています。本の好みは人によってそれぞれ違うので、自分のセンスと合う書店員のTwitterアカウントをフォローするのも一つの手です。

 

http://twitter.com/#!/shosengnd

 

http://twitter.com/#!/yurindo_akb

 

かく言う私も「国際関係」「共産趣味」「コレクション本」「珍書」と言った自分の範囲内のジャンルの面白い新刊が出たら、すかさずTwitterで紹介する様にしています。また最近では高齢化が著しい出版業界に、若くて優秀な人材が入ってきて欲しいので、編集者の求人情報をいち早く配信する事にしました。

 

http://twitter.com/#!/hamazakikaku

 

新刊情報の収集テクニックは以上ですが、既刊本である事によってネットで新情報として現れなくとも、自分にとっては欠かせない本が世の中に存在するのも事実。ただ各出版社の目録を取り寄せたり、図書館の書誌データを片っ端から確認していくのは大変です。

 

そうではなく、息抜き程度に既刊本でどのような本が世の中に存在するのかをランダムに知る方法としては、古本屋のTwitterをフォローする事が挙げられます。私がフォローしているのは「本と文化の街 スーパー源氏」です。

 

http://twitter.com/#!/SuperGenji

 

また「IsbnCode.com 本の通販」が運営する「本の世界」というアカウントがISBNコードに基づき、世界中の本をアトランダムに配信しており、全く知らなかった面白そうな本と出くわす事が多く、非常に重宝しています。

 

http://twitter.com/#!/books3

 

実はたまに同業者でAmazonやYahoo!ブックス(終了)、各大型書店の新刊情報で集めているという人もいますが、私が長年検証した結果、案外これらのサービスは漏れが多く、書影や社名が載っていなかったり、RSSに対応していなかったりと使い勝手が悪いです。

 

私が披露しているこのテクニックも長い期間を経て徐々に進化してきたもので、未だに日々微調整しています。これが完成形態だと断言できるものではなく、現時点でも不完全なベータ版だと認識しています。

 

なぜこの様な企業秘密的必殺技を暴露しようかと思ったかというと、純粋に人目に触れることもなく、日の目を見る事もなく埋もれてしまっている、数々のマニアック的名著をもっと多くの人たちに知って貰い、出版を盛り上げたいからです。

 

それでは今後とも「ハマザキ書ク」、どうぞよろしくお願いします。

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