『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』新刊超速レビュ-

2014年3月5日 印刷向け表示
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アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉

作者:小倉 広
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2014-02-28
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人間は人生を描く画家である。
あなたを作ったのはあなた。
これからの人生を決めるのものあなた。

これはアドラーの言葉である。この言葉が深く胸に突き刺さってぬけないでいる。私はいままでどんな自分をつくってきたのだろうか?そしてこれからどんな人生を描いていくのだろう?この本を読んでからついそんなことを考えてしまう自分がいる。

先月レビューをした『嫌われる勇気』を読んでから、アルフレッド・アドラーのことが気になっていた。そんなときにアドラーの名言集をみつけたのだから、これを手に取らないわけにはいかない。これが本当に素晴らしかったのだ。この本を読んでから、よりいっそうアドラーのことを知りたいという欲求が高まっている。なんとなくアドラーブームも少しずつ来ているのではないか?という予感もしている。

知らない人のためにアドラーのことを簡単に紹介しよう。アドラーはフロイト、ユングに並ぶ心理学の巨人のひとりで、「人間心理学の源流」とも呼ばれている。「欲求5段階説」で有名なアブラハム・マズローや、『夜と霧』のヴィクトール・フランクル、『愛するということ』のエーリッヒ・フロムなど多くの心理学者に影響を与えている。また「自己啓発の父」と呼ばれており、デール・カーネギーの『道は開ける』やスティーブン・コヴィーの『7つの習慣』など、多くの自己啓発書がアドラーの影響を受けている。

この本には自己決定性、劣等感、感情、ライフスタイル、ライフタスク、家族構成、教育、共同体感覚、勇気、課題の分離といったテーマのアドラーの名言がおさめられている。それに著者が解説を加えたものだ。(なお、この本の著者が師事している岩井俊憲さんと、『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎さんが属する日本アドラー心理学会は、現在別の道を歩んでいるようである。『嫌われる勇気』とこの本では、一部見解に相違があるかもしれない。)アドラーの言葉からはとても多くの気づきを得ることができるだろう。

アドラーの言葉はどれもシンプルである。シンプルであるがゆえ、人によってはあたりまえに聞こえるかもしれない。でもあたりまえのことにこそ真実があり、それが本質なのだと思う。(先日の『道は開ける』のレビューでも同様のことを言っているのは、『道は開ける』がアドラーの影響を大いに受けているからであろう。)

彼の言葉は希望に満ち溢れている一方で、自分に対する一切の言い訳を否定する。全ては自分が選んだことの結果であるという考え方なのである。そう思うと、かなり厳しい言葉でもあるのだ。もう一度冒頭の文を見てみよう。

人間は人生を描く画家である。
あなたを作ったのはあなた。
これからの人生を決めるのものあなた。

私たちの人生というのは、自分が過去に選択してきた、たくさんの決断の結果なのだ。遺伝や生育環境などに多くの影響を受けたとしても、最終的にそれを選んだのは自分である。全てのことに対してNOをいう権利を私たちは持っているはずなのだから……。これまでの人生を作ったのは自分。これからの人生をつくるのも自分。そう考えると、やろうと思えば、私たちにできないことはなにもない。もう一つアドラーの言葉を引用しよう。

遺伝や育った環境は単なる「材料」でしかない。
その材料を使って
住みにくい家を建てるか、住みやすい家を建てるかは、
あなた自身が決めればいい。

私はこの言葉がこの本のなかで一番胸に響いた。家を料理に置き換えるとより説明がしやすいので、料理を例にしたいと思う。おなじ「材料」を与えられても、それをどう料理するかによって、できるものは全く変わってくる。カレーを作る人もいれば、煮物を作る人もいるだろう。温野菜にして材料そのものの味を楽しむ人。料理をせずに生で食べる人。そのまま放置して、材料を腐らせてしまう人など様々だ。美味しい料理にするのも、腐らせて捨ててしまうのも、それは全てあなたの選択次第なのだ。

自分の人生を楽しいものにするのも、つまらないものにするのもすべてはあなたの選択次第だ。同じものを見ても、人の感じ方はそれぞれ違う。コップ半分の水をまだ半分あるとみるのか、もう半分しかないとみるのか。見方を変えるだけで、世界はバラ色にも灰色にもなる。あなたはバラ色と灰色、どちらの人生を選ぶ?アドラーの考えに出会えたのだから、あなたはもう大丈夫。いまのあなたにできないことはなにもない。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

作者:岸見 一郎
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2013-12-13
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