【連載】『第五の権力 Googleには見えている未来』第2回 グーグル会長が語る「なぜ今テクノロジー業界で働くことが、こんなにも面白いのか?」

2014年3月25日 印刷向け表示
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グーグル会長・エリック・シュミット氏初の著書として全米ベストセラーとなった書籍『第五の権力―Googleには見えている未来』。昨日に引き続き、第2回をお送りいたします。テーマは「コネクティビティ(ネットワークへの接続性)」が私たちにもたらすものについて。

第五の権力---Googleには見えている未来

作者:エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2014-02-21
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オンラインの世界でリアルな経験!?

テクノロジー業界の経験則であるムーアの法則によれば、プロセッサチップ(あらゆる電子機器の根幹をなす小さな回路板)の処理速度は、24カ月ごとに倍増し続けるという。つまり、2025年のコンピュータは、2013年のコンピュータの64倍速くなっているというわけだ。

また光通信の情報伝達量に関する別の予測法則によると、通信速度が最も速い光ファイバーケーブルを通って伝達されるデータの量は、およそ9カ月ごとに倍々の勢いで増えていくという。

これらの法則はいずれ自然の限界にぶつかるが、それでも指数関数的に能力が向上し続けることは、はっきりしている。

グラフィックスやバーチャルリアリティ(仮想現実)の技術は、これからも飛躍的に向上し、私たちはオンラインでも実生活と同じか、それ以上にリアルな経験をするようになる。 
 

 SFの世界が「事実」になっていく

SFテレビドラマ「スタートレック」に登場するホロデッキがあなたのものになったらどうなるか想像してほしい。

この装置は、宇宙艦のクルーが利用する、体全体を立体映像で包み込むような臨場感あふれるバーチャルリアリティ環境だ。

もしあなたがこの装置を使えば、海辺の映像をバックに、エルビス・プレスリーの伝説のパフォーマンスを目の前に映し出すこともできるのだ。

実際、これから技術進化が進むたびに、SF作品のアイデアが科学的事実になっていく。

テクノロジー業界で働くことがこんなにも面白い理由

運転手のいらない自動車、思考で制御するロボット動作、人工知能(AI)、現実の環境にデジタル情報を重ね合わせて視覚化する、完全一体型の「拡張現実」。このような技術進歩が、自然界をつくるさまざまな要素と組み合わさり、それらを強化していく。

これが私たちの未来であり、こうした目覚ましい進展は、すでに形になり始めている。

今のテクノロジー業界で働くことが、こんなにも面白い理由はここにある。

ただ驚異的な新製品を開発、構築できるから、壮大な技術的、知的な挑戦ができるからというだけではない。

こうした進歩を通して、「世の中を変えていける」という実感があるからこそ、わくわくするのだ。

スマホのない時代にはもはや戻れない

情報通信技術は、テクニカルな問題だけでなく、文化的な問題を解決する糸口にもなる。

私たちが現実世界でどのように人と関わるか、自分自身をどう見るかは、私たちがオンラインの世界でじかに経験するものごとによって影響され、方向づけられるようになる。

人は、自分の覚えたいものだけ覚えるという「選択的記憶バイアス」のせいで、新しい習慣をすばやくとり入れ、以前のやり方を忘れてしまうものだ。

モバイル機器のない生活など、今では想像もできない。

いつでもどこでもスマートフォンが使えるこの時代、モノ忘れをしても困らないし、世界中のアイデアに自由にアクセスでき(アクセスを阻もうとする政 府もあるが)、いつも何かしら興味を満たしてくれるものが周りにある。

ただし、こうした機器をよい結果を生むような方法で使うのは難しいし、ひょっとする と今後はさらに難しくなるかもしれない。「スマート」(賢い)フォンとは、実に憎いネーミングだ。
 

スマートフォンを持つ「前」の時代には戻れない私たち。では次の時代で、いかなるパワーシフトが起こるのだろうか。第3回はこちら

 

エリック・シュミット(Eric Schmidt)
Google会長。1955年生まれ。2001年から2011年までGoogleの最高経営責任者(CEO)を務め、創設者のサーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジとともにGoogleの技術や経営戦略を統括してきた。Google入社以前は、ノベルの会長兼CEOやサン・マイクロシステムズの最高技術責任者(CTO)を務めていた。それ以前は、ゼロックス Palo Alto Research Center(PARC)で研究員を務め、Bell Laboratoriesやザイログに勤務していた。プリンストン大学で電気工学学士号、カリフォルニア大学バークレー校でコンピュータ サイエンスの修士号と博士号を取得している。2006年には、全米工学アカデミーの会員に選出され、2007年には、アメリカ芸術科学アカデミーのフェローに就任。新アメリカ財団の理事会会長のほか、2008年からはプリンストン高等研究所の理事も務めている。

ジャレッド・コーエン(Jared Cohen)
GoogleのシンクタンクGoogle Ideas創設者兼ディレクター。1981年生まれ。史上最年少の24歳で米国国務省の政策企画部スタッフに採用され、2006年から2010年までコンドリーザ・ライス、ヒラリー・クリントン両国務長官の政策アドバイザーを務めていた。現在はCouncil on Foreign Relations(米国外交問題評議会)の非常勤シニア・フェローを務め、National Counterterrorism Center(国家テロ対策センター)所長諮問委員会のメンバーでもある。著書は、『Children of Jihad』『One Hundred Days of Silence』など(いずれも未邦訳)。2013年には、雑誌TIMEによって「世界で最も影響力がある100人」に選ばれた。

【訳者略歴】
櫻井祐子(さくらい・ゆうこ)
幼少期よりヨーロッパやオーストラリアなど、10年以上を海外で過ごす。雙葉学園、京都大学経済学部経済学科卒。大手都市銀行在籍中にオックスフォード大学で経営・哲学修士号を取得。東京在住、一女一男の母。
訳書は、『選択の科学』(文藝春秋)、『イノベーション・オブ・ライフ』(翔泳社)、『100年予測』『エッセンシャル版マイケル・ポーターの競争戦略』(早川書房)、『劣化国家』(東洋経済新報社)など多数。

第五の権力---Googleには見えている未来

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