『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』-編集者の自腹ワンコイン広告

2014年4月4日 印刷向け表示
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アメリカのめっちゃスゴい女性たち

作者:町山 智浩
出版社:マガジンハウス
発売日:2014-03-31
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アメリカって、すごいかも……。
この本を作り終えた今、感想を一言で言うならこれに尽きます。

本書に出てくる55人の女性たちは、まるっきり恵まれない状況から、信じられないほどの高みに登りつめているのですが、それは単に運がいいとか、努力の成果というだけではないのです。アメリカという環境が、それを可能にしている。

不可能といわれた惑星を発見した天才天文学者は、ベトナムを逃れてアメリカに渡り、難民キャンプで育ちました。家には一冊の本もなかったといいます。ヒスパニック系初の最高裁判事は、プエルトリコからの移民で、ブロンクスの貧困者向け団地に生まれました。父親は小学3年までしか教育を受けておらず、英語も話せませんでした。

ところが彼女たちは、奨学金を得て、プリンストン、イエールといった名門大学に進学するのです。貧しい生まれ育ち→奨学金→名門大学、というコースは、この本に出てくる女性たちのひとつの典型です。アメリカの奨学金は、同じ学力の人がいたら、より恵まれない人のほうに与えるそうです。一族に大学進学者が一人もいない、などは、好条件のひとつになるらしい。

イギリスだったら、いくら勉強ができても、この出自で名門大学には入れないでしょう。そこがアメリカのすごさです。誰にでも機会は平等。実際、名門大学には、非アメリカ人の優秀な学生が大挙して入ってきて、中流の白人達が焦っているとか。


町山智浩さんは、15年前、勤めていた出版社を辞め、大学院に留学する妻について渡米しました。修士を取った妻は、そのままIT企業に就職。今はカリフォルニア州バークレーに住み、出勤する妻と、学校に行く娘を送り出した後は、家で原稿を書き、夕方、晩ごはんをつくって家族の帰宅を待ちます。

こういう生活を送っている夫が、近所には大勢いるそうです。アメリカでは、妻のほうが収入が多い世帯は、なんと全体の4割になったとか。

その理由は、これまで男中心だった技術職や専門職、管理職、それに経営に、女性が進出したから。女性の高学歴化が進み、「ガラスの天井」もついに壊れつつあるとのこと。

政治の世界では、オバマ首相が、女性や少数民族の実力者をどんどん抜擢、次期大統領には、ヒラリー・クリントンがなる可能性が濃厚とも。

こういうアメリカの状況を見ると、時代は確かに、変わっていっているのだな、と実感します。
それに引き換え、日本は……。主婦願望の女子大生が増えているなど聞くと、がっくり来ます。いいのか、それで。

町山さんは、まえがきで書いています。

「男女に関係なく、決して負けない人々の人生は、人をワクワクさせてくれます。元気にしてくれます。
だから映画と同じように、そのワクワクを日本の人たちに伝えたくて、この本を書きました。
女性も男性も、読んでワクワクしてもらえるとうれしいです」

諦めずに努力し続ける女性たちの生き方は、とてつもなくスリリングです。無難な人生より、おもしろいほうが断然いい! 

表紙は、人気イラストレーターの中村佑介さんが描いてくれました。

後ろの鏡の世界(故郷の田舎町)からマンハッタンへ出て来て、成功(自由の女神)するというストーリー。
背景には、マンハッタンのビル街のすきまから、
芸能やスタンダップコメディを象徴する【マイク】、
学問や小説など能力の象徴である【万年筆】、
そしてそれでも女を忘れず美しくいたい【口紅】
を配しています。

町山さんの大ファンという中村さんが、原稿を読み込んで素敵な解釈をしてくれました。

本には、55人の女性たちの写真ももちろん載っています。Kindle版には写真はないので、ぜひ単行本で。

この本を世に出せたこと自体が、私にとっては、最高にわくわくする体験でした。ぜひ楽しんでください!
 


広瀬桂子 マガジンハウス 書籍出版部
1987年、書籍部ができるタイミングの中途採用で、マガジンハウスに入社。書籍部に9年いた後、4つの雑誌編集部を経て、昨年秋に書籍部に出戻り。佐々木俊尚『家めしこそ、最高のごちそうである。』も担当。『アメリカの〜』と同時刊行した、料理人・山本千織の初のレシピ本『チオベン 見たことのない味 チオベンのお弁当』もお勧め。 
決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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