認定NPO法人育て上げネット理事長の工藤 啓と申します。働きたくても働けない若者の支援活動をしており、昨年は初の共著で『無業社会』という本も出版いたしました。その他、マンガHONZでレビュアーもさせていただいております。
若者は働けないのか、働かないのか
現在、15歳から39歳の若者が約3600万人ほどいますが、16人にひとりが「無業」です。この16人にひとりの若者は「働けない」のか、「働かない」のかという議論のなかで求められていたのが、若年無業者の実態です。子ども・若者白書などで大まかな統計データはあるものの、若年無業者に特化したデータはほとんどありませんでした。
日本で「若者支援」が本格的にスタートしたのは2003年と言われています。まだ歴史が浅く、調査研究も進んでいない領域でありながら、施策・政策が先んじて走り出しました。しかし、施策や政策が生み出されても、それを運用する専門部局不在が痛手となって、スムーズな成果へとつながりづらい課題が現存しています。
育て上げネットは民間活動に加え、政府や行政とも協働して若者支援を行っていますが、産業振興、子ども・青少年、福祉など、若者支援の受け元はバラバラです。働けない若者の存在が社会的なトピックスとなり、支援策が拡充された一方、どのような状況の若者に、誰が何をどうすべきなのか、についてのデータや根拠を提示するひとが誰もいない。エビデンス不在で走り続けて来たのです。
データ不在に切り込んだ「白書」が出発点
『無業社会』は、特に前者の課題にアプローチした書籍です。もともと、2013年秋に支援現場に訪れた2000名を超える若年無業者を類型別に分析した、育て上げネットと立命館大学が共同した『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析-』の発刊後、立命館大学の西田亮介先生との共著で「無業社会-働くことができない若者たちの未来-」を出版しました。
データ分析から見える無業社会を西田亮介先生が、現場の事例や取り組みを私が担当しました。特に、麻木久仁子さんによる書評は非常に広く読まれました
本書にはさまざまな意見が寄せられていますが、中規模ながらもデータに裏付けられた若年無業者の実態と、無業の若者のストーリーが並立していることをご評価いただいています。それだけ若者の無業化(働けないのか、働かないのか)は社会的なトピックスでありながらも、その実態の見えづらさに“もやもや”した気持ちを抱えられているひとが存在するのだと思います。
データ・エビデンスへの挑戦を継続させてください!
いま、私たちは上記の「若年無業者白書」出版後にいただいた「期待」と「批判」に応えるべく、新たな白書の制作準備をしています。若年無業者のより詳細な属性分析、それぞれの若者が抱える「課題」や「困難」の質を明らかにすること。そして、支援現場における意図と実践、アウトカムの可視化などがそれにあたります。
先般の「若年無業者白書」の制作にあたり、複数の研究助成に落選したことを受け、制作のための資金調達を、クラウドファンディングを通じて社会のみなさまにお願いをしました。そして、今回の白書についても、下記サイトにて制作資金の協力をお願いしています。
若年無業者の実態を詳細に分析した第二弾『若年無業者白書』を出版したい!- READY FOR
第二弾「若年無業者白書」を通じて、私たちは政府や行政の交渉テーブルに着き、志と根拠をもって、次代を担う「若者」のための専門部署設置、政策立案や制度設計にエビデンスを生かしていきます。どうか第二弾「若年無業者白書」の制作に力を貸してください。
工藤 啓 認定NPO法人育て上げネット理事長 成城大学中退 Bellevue Community Collage卒業 最新刊「無業社会」など複数著書 金沢工業大学客員教授,東洋大学非常勤講師