新コーナー「今週のSOLD OUT」が盛り上がっています。“ネット書店の隆盛で、町の書店が減っていく…”といったような暗い話題を吹き飛ばすような、この「Amazonになければ町の本屋さんへ!」という提案に、私はいたく感動しておりました。
その後、いつしか「予告SOLD OUT」コーナーのようになってきていますが、ここでひとつその「SOLD OUT効果」の検証をしてみたいと思います。
新刊発売間近や発売前のものは除外し、レビュー掲載日(予告SOLD OUTは予告日)
からの前後7日間の合計売上で伸張率を比較してみました。(日販オープンネットワークWIN調べ)
書名 | レビュー日 | 伸張率 |
『耳鼻削ぎの日本史』 | 6月24日 | 67.3% |
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6月25日 | 127.9% |
『狂気の科学』 | 7月14日 | 100.0% |
『不健康は悪なのか』
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7月16日 | 100.0% |
『はたらかないで、たらふく食べたい』 | 8月4日 | 66.7% |
『慟哭の谷』
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8月10日 | 605.3% |
『ミリタリーテクノロジーの物理学』 | 8月22日 | 202.9% |
『暴力の解剖学』
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8月24日 | 700.0% |
『習得への情熱』 | 8月25日 | 211.1% |
このコーナーがスタートした頃は、誤差の範囲と見ても良いような変化しか見られなかったものの、時間が経つにつれてその効果が見えてきます。そもそもHONZでレビューされる本は、ノンフィクションの中でも比較的高価、内容もカロリー高めの本が多くラインナップされています。こういったことから、そもそも市場在庫が多くありません。これが動きの少なかった1つの要因とも言えます。
この流れを大きく変えたのが『慟哭の谷』のレビューでした。これは文庫本のため本屋さんで手に入りやすかったこともあるのでしょう、前週比605%という高い数字をたたき出しました。
あまりに出来すぎた実績に目を疑い、このレビュー以外の要素がないかも少し見てみましたが、レビュー掲載日8/10前後には新聞掲載、TVパブリシティなどはありませんでした。下記は日別の売上データですが、明らかにレビュー日をきっかけに波形が変化しています。
それ以降、成毛眞による予告SOLD OUTなどこのコーナーも複雑さが増してきていますが、どれも前週比で高い伸び率を示しています。書店さんが「今週のSOLD OUT」コーナーを作って、この情報を迎え撃ってくれたりしたら本当にいい話なのですが…
さて、HONZの今の話題は『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。このコーナーのきっかけになった『ホワット・イフ?』とともに、発売前からHONZへ掲載されたため売上伸張率をはかることは出来ませんでしたが、今後の動きが非常に楽しみです。
それでは一足先に、『世界の辺境とハードボイルド室町時代』を読んだ方が今手に取っている本の中から、注目本をいくつかご紹介させていただきます。
ノーベル賞を授賞した益川先生が、自らの戦争体験・反戦活動を振り返ると同時に、多くの科学者が戦争に駆り出された過去、これからについて提言した1冊
相変わらず世は辺境ブームの模様。「辺境」繋がりでこちらが良く手に取られています。
冒険好きな読者が多いのか、先月2巻が発売になったこちらのコミックも併読本に上がってきています。RPGでは一般的なダンジョン、ここを旅する冒険者にとっての敵の1つが空腹です。お腹が空いているなら、倒したモンスターを食べちゃえ…という斬新な発想、そしてよりによってこれがとても美味しく見えてくる画力で人気上昇中マンガです。
これらの書籍が『世界の辺境とハードボイルド室町時代』の併読本として、数字を伸ばしてくるかどうか。そして今週のSOLD OUTコーナーが今後どうなっていくのか、どちらも目が離せません。