『青年市長は“司法の闇”と闘った』弁護士が記す最高裁までの詳細美濃加茂市長事件における驚愕の展開

2018年2月6日 印刷向け表示
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 2017年12月11日、最高裁は浄水設備導入を巡る収賄などの罪に問われた岐阜県美濃加茂市長、藤井浩人被告の上告審で市長の上告を棄却する決定をした。懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金30万円とした二審の有罪判決が確定し、公職選挙法の規定により失職した。(朝日新聞記事)

この事件は藤井が美濃加茂市の市会議員だった13年4月に、地下水供給設備会社社長から設備導入の依頼を受け合計30万円の賄賂を受け取ったというものだ。その年の6月、28歳という全国最年少の市長として当選した藤井は、14年6月24日にこの汚職事件で愛知県警に逮捕された。

しかし無実を訴え、一審の名古屋地裁判決は無罪。だが検察が控訴した二審名古屋高裁判決は逆転有罪となり最高裁に上告していた。

本書は、最高裁の判決直前までの経過を担当弁護士が詳細に記録したものだ。元東京地検特捜部の検事だった著者は、企業や官庁の不祥事対応の専門家であり、由良秀之という筆名を持つ小説家でもある。東京に事務所を構える郷原信郎が名古屋で起訴された藤井の弁護を引き受けたのは、最初の接見の折に得た無実・潔白の確信からだった。

通常、警察が現職市長を逮捕した以上、不起訴になることはないという。地検が十分な事前協議を行ったうえで逮捕しなければ、警察の責任問題となる。検察も総力を挙げて有罪を立証しようとするだろう。

だが藤井は一貫して無罪を主張し、市民も支持した。いったん市長の座を退き出直し選挙を行っても、また市長に返り咲くほどの信任を得ていたのだ。

本書は藤井元市長側の主張に沿ったものであるから、すべてを信じていいわけではないだろうが、賄賂を贈った男の背後や威圧的な取り調べ、相手方弁護士と検察の癒着など、信じられない事実が明らかにされるにつれ、ふつふつと怒りが込み上げてくる。ここ数年、胸に燻っている司法への不信が、さらに募る一冊であった。(週刊新潮2月1日号より加筆し転載)

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 小説家としての著者の作品。読み応えあり。

 

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