『貧困脱出マニュアル』本当にハングリーなやつは夢を見ることも許されない!

東 えりか2018年12月07日 印刷向け表示
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貧困脱出マニュアル
作者:タカ大丸
出版社:飛鳥新社
発売日:2018-10-03
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貧困は罪悪であり、病である。すべての悪の根源である。

タカ大丸は英語同時通訳・スペイン語翻訳者のポリグロット(多言語話者)である。テレビ出演も多いのだが、視聴者から「見た目が怪しい通訳」と言われているそうだ。だがその実力は折り紙付きである。2015年『ジョコビッチの生まれ変わる食卓』でグルテンフリーという食事の概念を紹介し、その後、大ブームとなったのはご承知のとおりだ。

タカ大丸が翻訳者として優れているのは、予測能力が高いことにある。これから“来るヒト・モノ”への嗅覚はすごい。さらに優れているのは分かりやすい日本語翻訳である、ということだ。翻訳本でよくある「何を言っているかよくわからない」日本語ではなく、すらすらと体に入ってくる。

彼は貧しい家に育った。そのうえ父親のDVが激しく、新聞沙汰にまでなったことがあるという。冒頭は本書の「まえがき」の言葉だが、貧困をなくすことが彼の生涯の悲願だと断言する。そう、『貧困脱出マニュアル』は数多ある「貧しさからどう抜け出すか」という本とは一線を画す劇薬なのだ。今日の5000円から10年後の一億円までどう稼げばいいか具体的に詳述していく。

喫緊の急務は目先の貧困から抜け出す方法だ。基本中の基本であり学歴とも関係ないスポーツ栄養サプリメント会社の社長、デービッド・ホルトンを例にとる。

カナダ人の義父はアルコール中毒で、働きづめの日本人の母と姉そしてデービッドを虐待した。デービッドは何が何でもカネを手に入れようと、近所の人がやりたくない仕事を引き受け、それで収入を得た。カナダの四季も日本同様に厳しく、夏は芝刈り、秋は落ち葉掃き、冬は雪かきを引き受けた。次は新聞配達だ。他の地域の分の担当者になにがしかの金を払い配達させてもらったという。彼の貧困脱出法は「人がやりたくないことをやる」ことだった。

他にも様々な成功者を例にとり、貧困の脱出法を聞く。定時制高校時代に500万を貯めるために賄い付きの仕事を得て食費を浮かせ、睡眠時間を極力減らしてなりふり構わず働く方法や、タカ大丸自身が心の支えとした「ここからのし上がっていくのだ」という強いモチベーションの保ち方、そして遅刻をするときは電話一本掛ければいいというような当たり前の社会常識とは何か、という教えは多くの若者の参考になるだろう。

まずは100万円貯める。これが目標だ。ここが正念場で100万円貯められたら次の200万円はなんとかなる。新しい人生を始める元手になる。タカ大丸成功の第一歩はここだった。

貧乏人が夢を追うなら現実的なものにしろ、というのも確かにそうだと思う。高校の部活でバスケやバレー、ラグビーなどプロの世界がないスポーツに打ち込む余裕はないはずだ。野球やサッカーは狭き門で、幼いころからお金をかけなくてはプロになるのは難しい。つまり、今の日本のプロスポーツ選手は金持ちの子供だ、ということになる。(世界的に見ても、ハングリー精神で貧困からのし上がったスポーツ選手はごくまれなのだそうだ)

そんななか、唯一経験なしでプロになれるスポーツがある。それが「相撲」だ。いろいろ問題の多い相撲界で、日本人力士が活躍できない理由が本書でよくわかる。中学卒業時、165センチ以上、65キログラム以上の男子、経験不問で衣食住タダ。十両に上がれば月収100万になる。その他の手当ても手厚い。遊んだりしなければ、十両を2年続けると2000万貯めるのも夢じゃないという試算もできる。外国人力士は、その地で名を遂げたアスリートが入門してくる。なるほど、腑に落ちた。

メルカリ、民泊、競輪や競艇選手、新薬の治験、同時にふたつの外国語を習得する方法、などなど、言われてみれば、きちんと知っていれば、間違いなく金を稼げる方法をこれだけ懇切丁寧に指南している本はないだろう。目先の貧困を解決できれば、将来の展望が見えてくる。ここからがタカ大丸の真骨頂だ。

日本という国がどちらに向かって動いているか、そのときに必要なのはどういう人材か。未来予測ができれば圧倒的に有利に立てるし、その方法は極めて理論的だ。彼は多くの著名人の成功譚と経済本を読みこなし、そのなかで自分に合った方法を見出している。万人に向いているとは言い切れないが、自分が行きたいという道がわずかでも見つかったら、関連情報を調べ尽くして先を予測する。この努力は絶対に必要だろう。

メンタルな部分も大いに関係する。育ってきた環境、家族や友人・婚姻関係で傷ついてきた人はどうやってその心と向き合っていくべきかという章を読んでいたら、なんだか涙が出てきてしまった。自分にはまったく当てはまらないのに、救われる人がいるだろうなあと思ったら泣けてきたのだ。

「How to本」を読んで感動することはあまりない。旅行や料理、家の片づけ方法など必要な場所だけ抜き読みすることはあっても、人に勧める本に出合うことはなかなかないのだ。だがこの『貧困脱出マニュアル』は苦しんでいる若者に伝わってほしいと思う。それが、何より著者が一番望んでいることなのだから。

*本書を書いたタカ大丸とはどんな人だろうと思っていたら、イベントのゲストで読んでいただけることになった。私もいろいろ知りたいです!

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