『お金の流れで読む日本と世界の未来』歴史は少しずつ形を変えながら、似たような形で反復する

堀内 勉2019年02月19日 印刷向け表示
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お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する (PHP新書)
作者:ジム・ロジャーズ 翻訳:大野和基
出版社:PHP研究所
発売日:2019-01-17
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ジム・ロジャーズは言う。

私は常に、歴史の流れを踏まえながら、数年先を見るようにしている。歴史の流れは、先を読む力、とりわけお金がどう動くかという未来を教えてくれる。 成功したければ、将来を予測しなければならい。

ロジャーズは、「イングランド銀行を潰した男」の異名を持つ、かの有名なジョージ・ソロスのかつてのビジネスパートナーであり、ソロスと共にクォンタム・ファンドを立ち上げた、世界的に有名な投資家である。

今は子供の教育のため、特に中国語をマスターさせるためにシンガポールに移住し、そこを拠点に世界中に自己資金を投資している。

1973年から運用を開始したクォンタム・ファンドは、10年間で40倍以上のリターンを出したと言われる伝説のヘッジファンドで、その投資手法は「グローバル・マクロ」と呼ばれる、世界各国の経済状況や金融市場の動向をマクロ的な視点で分析し、株式や債券を始めとする様々な金融商品に投資するものである。

ソロスは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で哲学の博士号を得ているが、ロジャーズも、イエール大学でアメリカ史とヨーロッパ史を、オックスフォード大学ではイギリス史を専攻し、歴史学の修士号を取得している。

ロジャーズは、オックスフォードでイギリス史を学んでいた時に、過去とよく似た出来事が繰り返し起きていることに気づき、その後、ウォール街でも、お金(資本)について同様のことを感じたそうだ。

それ以来、数十年にわたって日本や中国を始めとするアジアやその他地域の歴史を学び、二度の世界一周旅行を敢行し、世界各地で起きていることを実際にこの目でも確かめてきた。一度目はバイクで世界6大陸を走り、二度目はメルセデスで116カ国、24万キロを走破した。

このように、歴史から「お金はどう動くか」を学んだおかげで、これまで、リーマンショック、中国の台頭、トランプ大統領の誕生、北朝鮮の方針転換など、数多くの出来事を事前に予想できたという。

よく「歴史は繰り返す」と言われるが、ロジャーズに言わせれば、歴史は全く同じことを繰り返すのではなく、少しずつ形を変えながらも、何かしら似たような形で反復するのである。

これを、「歴史は韻を踏む」と表現したのが、作家のマーク・トウェインである。戦争、飢餓、不況、外国人迫害、貿易戦争、移民問題・・・こういった問題は、手を替え品を替え、繰り返し過去に何度も起きている。経済について言えば、「4~8年の周期で大きな問題が起きる」というのもそのひとつである。

そして、ロジャーズは今、これから1~2年のうちに、リーマンショックを遥かに超える、我々が生きてきた中で最悪の経済危機が起きると予想している。なぜなら、世界中の負債額が史上最悪の数字を記録しているからであり、これに米中貿易戦争も絡んだら、とんでもない大惨事になるだろうという。

ロジャーズは、現代を生きる我々にとって最も重要なのは、時代の変遷を肌で感じ取り、韻を踏みながら変化し続ける時代の流れに合わせ、それに順応することであるという。人は歳を重ねる度に変化に順応するのが難しくなるが、頑なに変化を拒んでいれば、今は絶好調でもいずれ仕事を失うことになる。

こうしたことから、若い人にはとにかく世界に飛び出すようアドバイスしている。そして、彼がもし今の時代を生きる日本人の若者だったら、行く先として、韓国、中国、コロンビア、ベトナムのいずれかの国を選ぶという。

韓国とコロンビアについては、直感的にはなぜなのか理解しがたいものがあるが、その理由については本書に詳しく書いてあるので、是非読んでみて頂きたい。特に、北朝鮮については、これから世界で最もエキサイティングな場所になると言っている。

今は世界一の経済大国であるアメリカは、同時に世界最大の債務国でもあり、かつてのイギリスのように衰退していくのは確実で、これからは勧められないそうだ。日本人からすれば非常に意外なのだが、リーマンショック後の各国の対応を見ていると、アメリカも確実に日本と同じ轍を踏みつつあるというのが、ロジャーズの見立てである。

2008年のリーマンショック当時、各国政府は大規模な経済対策を発表し、多くの資本主義国は銀行の国有化を行ったり破綻企業を救済するなど、まるで社会主義化したような政策を打ち出した。バブル崩壊後、日本が「失われた30年」に突入したのは、そうした「ゾンビ企業」を救済したせいだが、リーマンショック後のアメリカでも同じことが起きているのだという。

その結果、今や世界の負債総額は史上最悪の水準に達している。政府、企業、家計、金融機関を合わせた世界の債務残高は、2018年3月末時点で247兆ドルと、2008年末と比べると、43パーセント、75兆ドルも増加している。その一方で、世界の国内総生産(GDP)の総額は、37パーセント、24兆ドルの増加にとどまっている。

対GDP比で見た債務規模は、2.9倍から3.2倍に拡大しており、稼ぎに見合わない借金を抱える構図は、リーマンショック当時より更に悪化しているのである。

アメリカは、破産させるべき企業を救済し、刑務所に送るべき者に退職金を支払ってきた。1991年に経営破綻したイースタン航空の元CEOのフランク・ボーマンが、「破産なき資本主義は地獄なきキリスト教」であると言ったように、地獄に送るべき人間を放置しておくと、この世が地獄そのものになってしまうのである。

1907年にノーベル文学賞を受賞した、ラドヤード・キプリングというイギリスの詩人がいる。彼の「The English Flag」という詩に次のような一節がある。

What should they know of England who only England know?(イギリスのことしか知らない人が、イギリスの何を知っているというのだ?)

これはイギリスだけでなくどの国にも当てはまる。海外へ行くには多少の勇気がいるかもしれないが、後で振り返ってみれば、それが人生でベストな決断になるだろうというのが、ロジャーズのアドバイスである。

本書は、次のような言葉で締めくくられている。

私たちの世界は大変化のただ中にある。それを恐れるだけではなく、実際に訪れ、あなた自身の目で見てほしい。それはきっと楽しく心躍る経験となるだろ。

日本の若者には、とにかく国外に飛び出して世界を体感してもらいたい。

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