リッツ・カールトン本にハズレなし『伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法』

田中 大輔2019年05月29日 印刷向け表示
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伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法
作者:ホルスト・シュルツ 翻訳:御立 英史
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2019-05-23
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 書店員時代から「リッツ・カールトン本にハズレなし」という経験則が私の中である。ビジネス書には名作を生み出す鉄板ジャンルというものがいくつかあるのだが、リッツ・カールトン本もその一つだ。サービス・ホスピタリティ関連ではスターバックス本にもハズレがない。その中でも、経営者が自らの経験を書いた本には良書が多い。

例えば、スターバックスの創業者、ハワード・シュルツの『スターバックス成功物語』、『スターバックス再生物語』は紛れもない名著である。スターバックスの日本法人社長を務めていた岩田松雄の著作『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』や、リッツ・カールトンの日本法人元社長・高野昇の書いた『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』も素晴らしい本だ。

そんな鉄板ジャンルであるリッツ・カールトン本の真打ちがついに登場した。本書はリッツ・カールトン共同創業者で初代社長であるホルスト・シュルツが自身の経験をもとに、サービスについてと、組織の作り方、そしてリーダーの在り方を綴ったものだ。

ドイツの小さな村で育った少年がいかにして、リッツ・カールトンのトップに君臨することができたのか?またリッツ・カールトンやカペラ・ホテルグループにおいて卓越したサービスを生み出す組織をどのように作っていったのかが本書では語られている。

ホルスト・シュルツは14歳で村を出て、ホテルの仕事を学べる寄宿生の学校へ通い、そして「ザ・クアハウス」(「保養施設」の意味)というホテル・アンド・スパでキャリアをスタートさせた。最初の仕事は灰皿の片づけだったそうだ。灰皿の片づけをしていた少年が、ラグジュアリーホテルの創業者になるなんて、ものすごく夢があると思わないだろうか?

『クア・ハウス』では、ホテル学校へ行く水曜を除き、朝の7時から夜の11時までという長時間労働を続けたという。学校へ行く日も夜はホテルで働いていたようだ。そこで出会ったカール・ツァイトラーというメートル・ドテル(筆者注:英語ではヘッド・ウェイター。給仕を行うサービス責任者のこと)から多くのことを学び「紳士淑女にサービスする紳士淑女」というモットーを生み出した。このモットーは、リッツ・カールトンにも「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」という形で受け継がれている。

リッツ・カールトンといえばクレドが有名である。クレドとはそこで働く人々の信念であり、組織の文化になるものだ。リッツ・カールトンでは世界中の全従業員が、「クレド」、「サービスの3ステップ」、「モットー」、「サービスバリューズ」、「従業員への約束」が記載されているクレド・カードを常に携帯し、率先して実行しているという。

本書にはクレドの代わりに、リッツ・カールトンを去った後で創業したカペラ・ホテルグループの24項目からなるサービス・スタンダードが掲載されている。このサービス・スタンダードを読むだけでもこの本を読む価値があるだろう。「電話には呼び出し音3回以内に出る」など、当たり前のことも中にはあるが、そういった当たり前のことを当たり前にやることがいかに大事か?ということを考えさせられる。サービス・スタンダードに書かれている姿勢はホスピタリティ業界に限らず、接客業など多くの業界で参考になるはずだ。

カペラ・ホテルグループでは、シフトのはじめに、24項目あるサービス・スタンダードの1つに焦点を絞り、10分間程度のミーティングを毎日行っているという。毎日やることでスタッフが理屈抜きに、「ここではこうやる、それが当然だ」と思うようになるというのだ。そういえば、20年近く前に働いていたユニクロでも、このようなミーティングを行っていた。ユニクロでは基本方針、3つの約束、販売6大用語を仕事に入る前に必ず唱和してから仕事に臨まなければいけなかった。毎日、口にすることでそれが当然という空気が生まれていたことを覚えている。

社員は単なる労働力ではないとシュルツはいう。テイラー主義に「ノー」を突きつけ、社員から人間的要素を奪ってはいけないともいっている。人間は命令や指示で動くのではない。動機や目標がその人を動かすのである。本書ではどのようにリーダーシップを発揮すれば、自発的に動く人材が育つのかということも紹介している。ホルスト・シュルツという傑出したリーダーがリーダーシップの在り方について書いている本書は、部下を抱える多くの人に大きな示唆を与えてくれるだろう。

最後に前の話とは何の脈略もなくて恐縮なのだが、本書で一番心に刺さった部分をどうしても紹介したかったので、引用してレビューを締めたいと思う。

「お客様がワクワクしてくれる仕事をしていれば、自然とお金はやってくる」これが、あなたが受け取る給料が生まれる道筋だ。これが組織を活気づけ、生き長らえさせる原動力だ。お客様が望むものを、望む方法で提供することができれば、お金を払ってもらうことができる。(中略)お客様(有権者、会員、寄付者、そのた呼び名は何であれ)は、それぞれの自分自身の欲求を持っていて、それに対してお金を払ってくれる。その欲求を意識し、それを満たすべく動くとき、ビジネスははじめて実現可能なものとなって回り始めるのである。

スターバックス成功物語
作者:ハワード シュルツ 翻訳:小幡 照雄
出版社:日経BP社
発売日:1998-04-23
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スターバックス再生物語 つながりを育む経営
作者:ハワード・シュルツ 翻訳:月沢 李歌子
出版社:徳間書店
発売日:2011-04-19
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「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方
作者:岩田 松雄
出版社:サンマーク出版
発売日:2012-10-09
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リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間
作者:高野 登
出版社:かんき出版
発売日:2005-09-06
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