『どんな肉でも旨くする サカエヤ新保吉伸の全仕事』タベアルキスト・マッキー牧元さんの企画による、精肉業界のカリスマ・新保吉伸さんの新刊書

2019年8月7日 印刷向け表示
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どんな肉でも旨くする サカエヤ新保吉伸の全仕事

作者:新保 吉伸
出版社:世界文化社
発売日:2019-07-27
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タベアルキストとして食の世界で絶大な人気を誇り、日本ガストロノミー協会の副会長でもあるマッキー牧元さんが企画・構成した、精肉業界のカリスマ・新保吉伸(にいほよしのぶ)さんの新刊書『どんな肉でも旨くする サカエヤ新保吉伸の全仕事』を早速読んでみました。

新保さんは、1980年に19歳で精肉業界に入り、27歳で独立して滋賀県に「近江牛専門店さかえや」を開店し、それから30年間にわたり日々肉と向き合い、人生の全てを肉に捧げてきた人です。

本書を読んで新保さんの熱意と日本の肉の進化のすごさに心底驚きました。自分はこれまで肉のことを何も知らなかったのだと。今はやりの冷蔵庫内で風を循環させながら乾燥熟成するドライエイジング、真空パックして保存するウェットエイジング、それに日本の伝統技法である枯らし熟成など、大変勉強になりました。肉に関する本は数多(あまた)されていますが、本書が決定版と言えるのではないでしょうか。

先日、新保さんの肉を仕入れている、本書にも登場する中島武社長率いる際コーポレーションの「ビストロ オー オン ブーシュ」に行って、色々な肉を食べ比べて来ましたが、肉の世界観が変わりました。食べた順番に挙げると、①北海道ジビーフ・ウデ→②北海道十勝若牛熟成リブロース30日→③秋田和牛熟成肉40日→④北海道阿蘇あか牛の4種類で、個人的にはやはり熟成肉が素晴らしいと思いました。

新保さんの肉は、今、日本中の一流の料理人たちから「この人の手当てを受けた肉を扱いたい」と熱烈な支持を得ています。なぜかと言うと、新保さんは「おいしくならない肉はない」と、それぞれの個性を生かした手当てをして、料理人の好みにできる限り寄り添うように肉を仕立ててくれるからです。そのために、取引したいと言われた店にはまず食べに行き、調理方法、道具、厨房設備、客層、メニュー、ドリンクリストなどを見て、料理人ととことん話し合い、取引をするかどうかを決めているそうです。

つまり、サカエヤは卸問屋ではなく精肉店としての立ち位置で、肉を「手当て」してから販売しています。ですから、新保さんは自分の仕事は「肉を作る」ことだと言っています。

そんな新保さんが扱う肉は、年間出荷12頭までの北海道駒谷牧場の完全放牧牛ジビーフ、三重県愛農高校の生徒が育てた愛農ナチュラルポーク、岡山県吉田牧場のブラウンスイス牛などですが、彼が手当てする牛肉はA5ランクはなく、むしろA2やA3などの和牛や経産牛などで、新しい価値観を生み出すポテンシャルのある肉ばかりです。そうした新しい価値観を生産者と共同で作り上げ、作り手と使い手・食べ手をつなぐ役割を担っています。

新保さんの仕事ぶりは、今年5月に放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」でも取り上げられ話題になりました。サカエヤのホームページには、次のような新保さんのメッセージが書かれています。

「おいしい牛肉をお届けすることが私たちの仕事であり使命です。しかし、その前に正しくありたい。生産から流通、販売まで正しい心と技術でひとつの命と向き合いたい。」

最後に、東京で新保さんの肉が堪能できるレストランの一覧を挙げておきます。しばらくの間、新保さんの手当てした肉の食べ歩きが楽しめそうです。

[東京でサカエヤの肉を出しているレストラン一覧]
mesebaba(メゼババ)亀戸
近江源氏(おうみげんじ)新宿
IL GiOTTO(イル・ジョット)駒沢
Fukushima(フクシマ)都立大学
Meuglement(ムーグルモン)西永福
Bistrot Or en Bouche(ビストロ オー オン ブーシュ)池尻大橋
FRANZ(フランツ)白金
LE SEVERO(ル・セヴェロ)西麻布
祥瑞(SHONZUI)六本木
la Brianza(ラ ブリアンツァ)六本木
Cellar Fête(セラフェ)目黒
Restaurant L’asse(ラッセ)目黒
TROIS FLÈCHES(トロワフレーシュ)銀座
La Pioche(ラ ピヨッシュ)日本橋
masticare bene(マスティカーレ ベーネ)神楽坂

 

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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