『タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』

刀根 明日香2019年10月20日 印刷向け表示
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タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ
作者:小林 宙
出版社:家の光協会
発売日:2019-09-17
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著者の小林宙(そら)くんは、15歳でタネの会社を起業した。会社名は、「鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション」。どんな会社かというと、伝統野菜を主とするタネと苗の販売、そして農薬と化学肥料不使用の野菜(伝統野菜)の販売を生業としている。

本書は、宙くんが各地域の伝統野菜を守るために、「流通」を生業とした事業を立ち上げるまでの、ストーリーが綴られている。どうしても、「15歳」という年齢に着目しがちだが、文章には「15歳」という幼さは全く感じさせない。なぜタネが大事なのか、タネ業界を今後どう変えていきたいのか、宙くんは初心者にも分かるように丁寧に解説をしてくれる、その姿勢が非常に頼もしいのだ。

本書の魅力として、まず宙くんのレクチャーが抜群に分かりやすい。現在のタネ事情や将来の食料事情について、しっかり体系立てて教えてくれる。固定種やF1種、遺伝子組み換えでどんなタネが市場に出回っているのか。2018年4月に「種子法」が廃止されたことは、日本の未来にとって何を意味するのか。そして、地域の伝統野菜を守ることがどれほど大切なのか。農業の入門書としてもおすすめである。

さらに、宙くんのタネの魅力を追求する旅に心がわくわくする。実際に地域各地の種苗店に赴き、伝統野菜のタネを仕入れに行くのだ。種苗店はやっているかどうか分からないし、あっても目当てのタネが置いているかも保証がないのだが、タネを無事見つけたときの嬉しさといったら!お店の方々も、宙くんを子ども扱いしないで、対等に情報交換を行っている姿が素敵である。

事業を支える家族の姿も魅力的だ。巻末には家族4人からの手紙が掲載されているが、家族それぞれの人柄も素敵なのである。当たり前かもしれないが、家族が常に一番の理解者であり、いつも前向きに応援してきたからこそ、宙くんの世界観がここまで豊かに育ったんだなと、伝わってくるのだ。

「好き」から広がる世界。宙くんも最初は珍しいタネの採集から始まった。学校から持ち帰った朝顔の種を次の年に植えたら、うまく育たない。その次の年もうまく育たない。同じタネなのにどうして? 庭の端っこで一本スッと見たことのない苗が出ている。調べてみると、どうやら宙くんが以前植えたどんぐりの苗らしい。どんぐりからあの柔らかい苗が生えてきた!

こんな日常の発見が、宙くんのなかでどんどん大きくなる。植物をたくさん植えてみた。しかし、庭は日当たりが良くないから育ちが悪い。屋上を使ってみたら、ものすごく生えてきた。プランターをたくさん買い込んで、植物観察に没頭する。屋上でとれたトマトを頬張る幸せ。

いつしか、それが伝統野菜の保存につながる。しかし、その過程は、とても自然で、たくさんの人との出会いや種苗店への視察旅行のなかで培われたものだった。宙くんは、特別な子どもではない。最後に家族4人からの手紙があるが、小さな頃から宙くんの夢中になることを大切に応援してきた様子に心が温まる。

最初本書を手に取ったときは、15歳の男の子はどんなことに興味があるのかを知りたかったからだ。今仕事で教育に携わっているのだが、中高生が夢中になることを知りたかった。読後の今では、農業に関する知識欲がメラメラ燃えている。

繰り返すが、「好き」から広がる世界は、自然体で、どうしても応援したくなる。宙くんの純粋で真っ直ぐな情熱に胸が熱くなったと同時に、奥深いタネの世界を垣間見ることができた。宙くん、分かりやすい入門書を書いてくれて、本当にありがとう!

食べるとはどういうことか: 世界の見方が変わる三つの質問 (かんがえるタネ)
作者:藤原辰史
出版社:農山漁村文化協会
発売日:2019-03-01
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小林宙くんは、本書の座談会にも登場!藤原辰史先生と出会いでさらにタネの世界に魅了されたようだ。

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