2011年7月15日、東日本大震災の混乱がおさまらぬなか、ノンフィクションに特化したインターネット書評サイト「HONZ」が船出しました。代表の成毛眞自らが選抜したレビュアー10名が半年間準備して創立したHONZは、ひたすら面白いノンフィクションを紹介しつづけ10年が経ちました。この間レビュアーは増え、紹介した本は延べ3000冊に及びます。今回、10周年を記念してそのなかから100冊をセレクションしました。成毛眞の「はじめに」に私たちの思いは集約されています。面白いノンフィクションを読みたいなら、ぜひお手に取って確かめてください。(HONZ副代表・東えりか)
この本で取り上げた書籍は、ユヴァル・ハラリが人類の未来を語る『ホモ・デウス』から、アダルトビデオの帝王こと村西とおるの『全裸監督』まで100冊。書評サイトHONZが10年間にわたりレビューしてきた集大成です。
HONZは時間と空間に制限を付けることなく、読んで面白い本を紹介しつづけました。サイエンス、医学、生物、歴史、風俗、事件、アート、ビジネスなど、対象はあらゆる分野にわたります。
私達が自信を持って紹介した本は、かならずしもベストセラーではありません。むしろ隠れた名著を発掘して紹介してきました。視点はあくまでも面白いこと。教養や学習が目的の自習的な読書とは異なり、リビングルームでリラックスして読書を楽しむことを純粋に追求しています。
事実は小説より奇なり。ノンフィクションは、現代社会の奇なる事件を記述するだけでなく、宇宙のビッグバンにまで遡って、常識を超えた知識を読者に与えてくれます。
ノンフィクションは読者の視点を時空の彼方まで拡大してくれるがゆえに、21世紀を生きるための糧となると、わたしたちは信じています。量子化するIT、遺伝子工学の未来、米中の覇権争い、巨大地震や気候変動。20世紀後半と比較して地球や社会の変化率が大きくなってきたいま、その変化を皮膚感覚で感じ取ることが求められているはずです。そのためには読んで感じることができる非日常、すなわちノンフィクションが最適だと考えています。
しかし、ノンフィクション作家が語る非日常は作り話ではありません。編集者と読者の厳しい目を経て結晶化した過去と現在と未来の現実です。その結晶をさらに選別し、磨き上げるのがHONZの使命です。HONZのレビューは批評や批判ではありません。それぞれのレビュアーが読んで非常に感動した本を、その感動が薄れる前にレビューという文章にまとめたものです。それゆえに素朴な文章もあるかもしれません。だからこそレビュアーの感動が読者に伝わるだろうと信じています。
「非日常を感動すること」の対立項があるとしたら「日常を倦む」でしょう。感染症が世界で蔓延する時代では行動が制限され、感じることができる空間や時間は驚くほど小さく短くなってきています。結果的にわたしたちは日常に倦み、思考力や感性は鈍麻してきます。この本はそんな危機感を持っている読者にとって、最適の読書リストとなると思うのです。
HONZ副代表の東えりか、編集長の内藤順、すべてのHONZメンバーに感謝します。
HONZ代表 成毛眞