民俗・風俗
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『東海道ふたり旅 道の文化史』エッセイの名手が読み解く知的でビジュアルな東海道五十三次
久しぶりに出会った、上品にして趣深いエッセイとして読んでいる最中だ。読み終えるのがもったいないのだ。全35章。3章ほどをゆっくりと読むために、わざと場所と時間を変えている。早朝のカフェでクロックムッシュと、午後はおにぎりをほおばりながら公園の……more
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『陸軍と厠』もし、あなたが戦場で便意をもよおしたら
2019年01月10日戦場は危機に満ちている。いつ敵の襲撃があるかわからない。やるかやられるか。だが、危機は敵だけではない。過酷な環境下、自らの体調を崩すこともある。大病に至らないまでも張り詰めた空気の中、兵士だって行軍中に戦闘中にお腹がいたくなることもある。一体……more
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『美酒復権』NEXT5のその先へ
2018年12月03日「NEXT5」というグループをご存じだろうか?日本酒が好きな人ならきっと一度は耳にしたことがあるだろう。ゆきの美人の小林忠彦。白瀑(山本)の山本友文。福禄寿(一白水成)の渡邉康衛。新政の佐藤祐輔。春霞との栗林直章。秋田の蔵元5人が2010年に……more
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『青線』かつて存在した非合法売春地帯を歩く
2018年11月20日非合法の売春地帯「青線」はかつて日本に広く存在した。現状はさまざまだ。すでに旧観を失った街もあれば、細々と営業を続けている街もある。共通して、関係者の証言から浮かび上がるのは、諦念だ。行き場を失った女性たちは、青線に未来がないことを悟りながら……more
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それってホントに伝統?『歴史の「普通」ってなんですか?』
2018年10月29日それってホントに伝統ですか?この本を読むとあなたの中で「伝統」という言葉の持つ意味が変わってくるかもしれません。結論から言ってしまうと、こういうことになります。「歴史的に見れば、伝統とは、ちょっと長めの流行にすぎません。」…more
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『京都、パリ ―この美しくもイケズな街』斯界の泰斗が語り合う二都にまつわる薀蓄
辞書によると、「薀蓄」とは深く研究して身につけた知識のことである。しかし、小粋なバーの隣席に下手な薀蓄を傾ける御仁がいると、面倒くさいこと、この上ない。その話題が京都やパリであれば尚更だ。老舗カバン店のお家騒動だの、ルーブル美術館のスマホアプ……more
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『硯の中の地球を歩く』1億年前の原石に命を吹き込む無名の名工の誇りと決意
端正な本だ。カバーと帯を取りはずすと、表紙には原寸大に近い一面の硯が刷られている。装丁だけでなく、紙質や印刷も素晴らしい。ゆっくりと味わうように読んだ。著者は書道道具店の四代目。浅草の店では定番の筆や墨なども取り扱っているが、高級な硯は代々の……more
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『酒の起源―最古のワイン、ビール、アルコール飲料を探す旅』「食」から人類の歩みを知る
酒をテーマに選ぶ研究者や編集者たちは、酒に酩酊効果だけではない、アートを感じ取っているからかもしれない。タイトルがおしゃれというだけでなく、本文もグラスを片手にゆったりと読めるように工夫されている。本書も例外ではなく、要所に図版や地図が使われ……more
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『ノモレ』アマゾンの先住民を描いたノンフィクション文学の金字塔
2018年07月21日一昨年夏に放送されたNHKスペシャル「大アマゾン 最後のイゾラド」の姉妹作品である。イゾラドとは、文明社会と接触したことのないアマゾン先住民。狩猟と採取だけで太古から生きてきた自給生活者であり、その姿はまさに裸族だ。現在でも少人数のグループに……more
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『ノモレ』映像あっての作品ではなく、この本自体がひとつの世界をもった小宇宙である
2018年07月18日冒頭から歌うように始まるこのノンフィクションは、アマゾンで100年前に生き別れたイソラド(文明にまったく接していないアマゾンの部族)の物語だ。そして100年が過ぎた、と国分は書く。100年後のアマゾン。イネ族から文明に帰化し、先住民(イソラド……more
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『ノモレ』未知の先住民イゾラドとの100年越しの再会
2018年07月04日かつてNHKスペシャルで放映された「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」を記憶されている方も多いことだろう。イゾラドとは、文明社会と未接触の先住民を言い表す総称である。アマゾン源流域、ブラジルとペルーの国境地帯に住むとされるイゾラドは、部族……more
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現在、過去、未来……『AV女優、のち』
2018年07月03日晴れのち雨、雨のち晴れ。AV女優、のち――。AV女優の「のち」の後にはどんな言葉が似あうのだろう?のちに続く言葉がポジティブなものであればいいなと、心から思う。この本はタイトルが本当に秀逸だ。「その後」ではなく「のち」。「AV女優、のち」言……more
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『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000㎞歩いた男との冒険 リアルRPG譚』 絶倫ロバと歩いた3カ月
2018年06月06日春間豪太郎は海外旅行にまったく興味のない青年だった。昼は大学生で、夜は音楽系専門学校を掛け持ちしつつ、バンドでドラムを叩き居酒屋でバイトもしていた。だが親友がフィリピンで行方不明になったと聞き、救出に向かう。親友は無事だったのだが、この旅行が……more
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『辺境の思想 日本と香港から考える』
中国返還から20年がすぎ、「中国化」(大陸化)がじんわり進む中で、かつてのイギリス植民地下で育まれた自由の気風が減じている香港。しかし2014年の民主化デモ・雨傘運動以降、足もとでは新たな変化も起きています。一方、2011年の東日本大震災を経……more
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『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』本が宝物だったころ イタリアの山村、モンテレッジォの物語
ツイードジャケットは英国製よりもイタリア製のほうが好きだ。柔らかく、シワになりやすいが、肌に馴染んで、なによりも色合いが美しい。本書はそのイタリアの織物のように軽やかで、味わい深く、時には風を通すような美しい本だ。紙質、装丁など、どこを見ても……more