『ハダカデバネズミ』

2008年11月16日 印刷向け表示
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漢字表記をすると『裸出歯鼠』である。出っ歯で鼠顔な変態オヤジの小説ではない。岩波科学ライブラリーの最新刊なのだ。この岩波科学ライブラリーは本書で151冊目なのだが、総じて価格が高い。本書も118ページで1500円もする。本当に読みたい人は図書館に今すぐゴー、という狙いがありありだ。

ところがこのシリーズには面白そうな本がいっぱいあるのだ。例を挙げてみよう。

『Y染色体からみた日本人』

『皮膚は考える』

『Google Earthでみる地球の歴史』

『人はなぜハマるのか』

このあたりまでは内容をある程度予想できそうで、しかも面白そうだ。しかし次の群は内容が予測不能だ。とはいえ『エピジェネティック入門』は読んだ。良い本だった。

『エピジェネティック入門』

『研究者人生双六講義』

『宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ』

『ハダカデバネズミ』

この『ハダカデバネズミ』がじつに面白い。これが売れなければ岩波の営業は反省するように。個人的2008年ベスト5に入る本だ。著者はハダカデバネズミの研究者たちだ。とはいっても、ハダカデバネズミが何者なのか想像すらできないであろう。以下、少し本書から抜粋する。

ハダカデバネズミはげっ歯類なのだが40年近く生きる個体がいる。ハダカデバネズミには蜂の社会のように女王がいる。ハダカデバネズミは3キロもの地下トンネルで生きている。ハダカデバネズミは階級社会であり、兵隊ハダカデバネズミだけではなく、子供を暖めるだけの肉布団ハダカデバネズミもいる。ハダカデバネズミはパピプペポを発音できる。うはははは。

じつは本書の著者は理化学研究所の生物言語研究チームの研究者たちだ。言語の起源を解明するのが目的だという。そのためにハダカデバネズミを飼っているというのだ。著者チームは今日現在28歳と49歳。その年上の先生が始めてこの動物のことを学んだとき、『家畜人ヤプー』を連想したというくだりには爆笑した。

それにしても高い本なので著者たちには申し訳ないが、図書館で借りるのも手かもしれない。本当に残念な値付けである。これが700円だったら生物学などに興味を持つ中高生が買えたかもしれない。

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