宮田珠己『だいたい四国八十八ヶ所』(本の雑誌社)

2011年2月1日 印刷向け表示
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だいたい四国八十八ヶ所 だいたい四国八十八ヶ所
(2011/01/21)
宮田 珠己

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友人からブログの名前がなんで『本読みの理不尽』なの?と聞かれた。

いままでブログのの字も考えてなかったのだけど、タイトルはかっこよくしたい。

『日本語 語感の辞典』を引きまくったけど、いい言葉に出会えずに腐っていたときに見つけた本。

おお、そうだ、ワタシは仕事に行き詰るとこの本を開いて笑い、心を和ませていたのだ。

旅の理不尽 アジア悶絶編 (ちくま文庫) 旅の理不尽 アジア悶絶編 (ちくま文庫)
(2010/05/10)
宮田 珠己

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昨年『旅の理不尽』が復刊されたのだった。

宮田珠己のエッセイはワタシの心のカンフル剤だ。

ここからタイトルをお借りしよう。

こうして、パクリタイトルが完成したのであった。

さて宮田珠己の新刊『だいたい四国八十八ヶ所』の新刊書評である。

実は、何人かのお気に入り作家に関しては、あまりにも書きすぎたために媒体がなくなってしまった。

自分のブログなら堂々とかける。

贔屓の引き倒しにならないといいのだけど。

文芸誌、または週刊誌を媒体と想定した書評です。

「宮田珠己にはやっぱり旅をさせよ」

彼の新刊『だいたい四国八十八ヶ所』を爆笑の末読み終わって、抱いた感想はこれだ。

さすが「旅行人」で磨かれただけのことはある。肩の力を抜いて、真面目になりきらず、でもそれなりに真剣で、一応は悩みながらお遍路を続ける宮田珠己。彼にかかれは、遍路道もウミウシも迷路もジェットコースターも興味の重さは同じくらいだ。そこに行ってその場所に立つことに意義がある。それを今回はこう表現した。

― おお、私はここにいる!

四国の遍路は最近ブームだと聞いていた。しかし、本書で読むと、実はそうでもないらしい。旅の始まり一番札所では、人気のない売店でいろいろ買わされ、歩き遍路を見ないまま、二番札所に辿りつき、三番札所の近くに宿を取りと、人との交流がほとんどない。

まあ、宮田珠己という旅人は、どんな旅でも愛想がない。地元の人と交流を深めるとか、一夜の恋に身を焦がすとか、そういうことの似合わない人だ。「袖振り合うも他生の縁」くらいがちょうどいい。同宿したお遍路さんともつるんで歩いたりはしない。べたべた感がないのが心地いい。

「へんろころがし」なんて、脅しのような名前の場所もすたすた越え、山深い景色に感嘆の声を上げるわりには、愚痴が多い。最初から最後まで彼を悩ましたのは、足の裏のマメであった。確かにマメは痛い。だったら、もうすこしちゃんとした靴を買ったらどうなんだ。少なくとも、歩き出してすぐに底がはがれてしまうような靴なんて、いくらなんでも弘法大師を舐めているのではないか。同行二人の杖も買わなかったから、お大師だまが足の裏に取り付いたに違いない。

舗装された道もトンネルも呪詛のタネになる。雨が降れば足が濡れると、晴れれば暑いと、ご接待を受けても、宿坊の蚊にも、途中立ち寄ったジャングル風呂にも、いやもう、なにをそんなにぐだぐだ文句を言っているんだ、と読んでいる私が文句をいいたい。注文の多いお遍路さんである。

とはいっても、宮田珠己らしさを発揮するのは「どうにもヘンテコなもの」への鋭さだ。たとえば階段の上り方。お遍路はお寺めぐりでもあるのだから、当然、参道の階段をたくさん上る。彼は疲れない上り方を発見し、それを緻密に説明するのだ。思わず椅子から立ち上がり、彼の指示通りに足を上げ下げしてしまったではないか。

たとえば67歳のアメリカ人女性ヘレナとの同行。日本語がまったくしゃべれないのに一人で歩き遍路をするヘレナをサポートしつつ数日歩く。しかし、これも親切心というよりは好奇心が勝る。どうやら四国遍路は、スペインの巡礼道、サンチャゴ・デ・コンポステラほど有名になりつつあるらしい。英語の標識は絶対に必要だ。

途切れ途切れではあるが、64日かけて歩いた四国一周日記は旅心を誘われる。どうせやるなら、私も歩き通したい。その道すがら、本書は頼もしいガイドとなってくれそうだ。弘法大師と、ならぬ宮田珠己と同行二人。至極楽しそうである。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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