「神社ガール」って言葉までできたほど、神社が女子に人気になっている。縁結びで有名な出雲大社など、ご利益を求めた女子でいつでもごった返しているほど。そんな「神社ガール」にもっと神社を楽しんでもらいたくて作ったのがこの本。
そもそものきっかけは2年前に一緒に伊勢神宮125社をまわる本をつくったこと。昔は「伊勢神宮より伊勢丹が好き」だったという松尾さんの初イラストエッセイが何の因果か神社本。そのあと、今度は出雲の神社めぐりの本を出版。伊勢と出雲という日本の二大聖地の本を出したおかげで、松尾さんは図らずも「神社ソムリエ」のような存在に。そして、そんな神社ソムリエが伊勢、出雲と神社めぐりの本を出して、次のテーマに選んだのが「古事記とその神様」だった。
神社をまわるうちに、そこに祀られている神様に興味をもち、神様が描かれている『古事記』を読んでそのぶっとんだ世界観にシンパシーを感じ、これを伝えたいと思った松尾さん。「日本の神話はこんなに面白い、それを知れば神社めぐりはもっと面白くなる」、そう感じたとか。
『古事記』に登場する神様はどれも人間的で愛らしい。それをどう伝えるか……。選んだ方法が「ゆる神様」だった。これまでの自分の画風をガラッと変えた、漫画風キャラクターの3頭身神様。なかには人の姿をしていない神様までいる破天荒ぶり。
これまでキャラクターはあまり描いてこなかった松尾さんにとって、合計114もの神様を描き分けるのは大変な作業だったらしい。それぞれの神様のエピソードを注意深く読み込んで、何度も描き直した末に完成した神様たち。愛情がたっぷり詰まった可愛らしい神様のイラストは見てるだけでも癒されるはず。
キャラクター紹介の文章も簡潔で、家族構成、祀られている神社、ご利益もしっかり明記。『古事記』を読んだことのない人のために名場面も漫画にして紹介した。『古事記』の入門書としてぴったりの1冊。
想定していなかったのだが、このイラスト、子供に評判がいい。イギリスの歴史学者アーノルド・J・トインビーは「12、13歳までに民俗の神話を学ばなかった民族は必ず滅びる」といっているそうだ。この本が子供の神話教育の一助になれば、こんな嬉しいことはない。