『ホスト万葉集』“夜の街”で愛を囁く光源氏の末裔たち

東 えりか2020年07月16日 印刷向け表示
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ホスト万葉集 嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ
作者:手塚マキと歌舞伎町ホスト75人from Smappa! Group
出版社:講談社
発売日:2020-07-08
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嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名 サヨナライツカ

 

歌舞伎町 夢と希望と 欲望に うずまく町、町、人、人、町、町

 

心から会いたい会いたい探してたやっと見つけた売掛はらえ

 

威張るなよホストが凄い訳じゃない 死ぬ気で稼ぐ女が凄い

 

姫からの死角を探し姫を呼び 口を拭って姫から姫へ 

今や「悪の巣窟」のように言われる“夜の街” 歌舞伎町のホストクラブやガールズバーが槍玉に上がり、ホストがスーパースプレッダーになって日本中にコロナウィルスをまき散らしているくらいの勢いで叩かれている。

小池百合子都知事のお膝元なのだから、知事自ら情勢を視察してもよさそうなものだが、「悪いのは私じゃないの夜の街」(詠み人知らず)と揶揄されても、知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいる。

そんなホストたちが月イチで「出勤前歌会」を開き、短歌を詠んでいた。ホストクラブや飲食店など十数軒を束ねる「スマッパ!グループ」会長、手塚マキの呼びかけのもと、在籍のホスト75人が詠んだ短歌900首の中から俵万智、小佐野彈、野口あや子というプロの歌人が選んだ300首が本書に納められている。本音なのか、建て前なのか、彼らの言葉が意外に重い。

「はじめに」で手塚マキはこう言う。

ここはどこだ?

夢を見る場所?夢を見せる場所?

いや、ここにあるのは夢なんかじゃない。毎日大金が行き交うリアルだ。
否応なしに日々突き付けられる人間としての価値。
過大評価で大金を得ても、過小評価で苦渋を味わっても、ぴったりと感じることはない。
毎日歌舞伎町にいて、そんなリアルをホスト達は生きている。
そして、愛について考えている。

彼らを必要とする人たちがいる。その人たちの思いを真正面から受け止めつつ、売り上げを気にし、ホストとしての地位を求める。相反する思いを短歌に込める。思いもかけない言葉が紡がれる。

「彼氏みたい」はしゃいだ君と笑う日々 知らなかったよ、結婚してるの

 

酔わないとシャンパン入れないお姫さま 徐々に濃くするジャスミン茶割り

 

「ごめんね」と泣かせて俺は何様だ 誰の一位に俺はなるんだ

ホストたちはSTAY HOME中もZOOMを使った歌会を開いていた。見たことのない誰もいない歌舞伎町、仕事がない、姫に会えない。そんな日々の短歌は微笑ましい。

「コロナだし」行かない理由を探してた 嘘でなくて本当でもない

 

歌舞伎町 東洋一の繁華街 不要不急に殺される街

 

見つめ合い あ、これダメだね 照れ笑い カラダは離すもココロは密で

ホストの心意気は光源氏だという。短い言葉でさまざまな女性を惚れさせる。かつては和歌で今はLINE。短い愛の言葉のやりとりはセンスだと思う。胸に響く歌が多くて、付箋がふさふさ。

愛ってなんだ?

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