今回で私の担当が最後となる。HONZと出会えた感謝を込めて丁寧に言葉を紡ぎたいと思う。
ミシマ社の営業さんと話をしていると、真剣に本の良さを伝えようとしているのが分かる。こちらも自然と届けたいと思える雰囲気になる。本書を読み、三島さんの考え方が同じ会社で働く人々に伝わっているのだと感じられた。自由が丘の拠点、城陽から京都へとオフィスを移転させるまで、「感覚」を大事にする三島さんが悩んで苦しんで見つけた大切な「もの」を、ミシマ社が一冊一冊心を込めている本たちを、より多くの人に読んでもらいたいと思った。
必死で生きていると、たくさんの岐路に立つだろう。その都度選択を迫られるだろう。柔軟な心で対応していくためにも、「感覚」を磨き続けていきたいと思わされる本だった。
生きているからこそ、感じられるものがある。
今まで生きてきて「自分が消えてしまえばいい」と思ったことが、何度かある。帯の文章「どんな形でもたっちゃんが生きててよかったと思うよ」という台詞が、重くのしかかった。読み始めて、弱さと向き合わなくてはいけないような気がして怖くなった。
先に進むうちに、「もっと、しっかり生きなくては駄目だ」と感じるようになった。辛いときは、つい、孤独に感じてしまうものだ。一度でも、生きていくのが辛いと感じたことのある人にとって、本書は涙を流してくれる人の存在に気付かせてくれるだろうと思う。
苦しいとき、ふらりと入ったお店で少しでも笑顔になって欲しい。書店がそういう場所であって欲しいと、ずっと思っている。
一人一人の希望・夢・勇気が見つかるように、本書が灯火として導いていると感じた。今日マチ子さんの言葉以上の想いを優しく描いたイラストが、石井さんの文章と共鳴しあって強く輝いていると思う。どの人も必死で生きているのだ。表面だけで決めつけてはいけない。その人の想いは当人のものでしかないのだから。あるがままを受け入れていくことの大切さを教えてくれる本だと思う。
人には人のペースがある。相手を尊重しながら、お互いの意見を伝え合う関係でいられるといい。頑張りすぎている誰かがいたら、「ゆっくりでいいんだよ」と伝えてあげられる人が傍に居て欲しいと思う。きっと、息をするのが楽になるはずだから。
大人も子どもも読んでもらいたい絵本。選び抜かれた言葉と可愛いネコたちに、少しでも癒されたなら本書の価値はあると思う。誰一人として、価値のないものはいないのだと叫ぶように伝えてくれる。
本が人に寄り添うのだと伝えてきたが、果たしてどこまで届くのかは自信がない。だからこそ、この先も信じ続けていきたいと思う。HONZの書評をこれからも読み、知識を蓄えていこうと思う。「HONZの文章、読んだよ」「感動した」「読んでみたくなった」と言葉をもらったことも大きな力となるだろう。今まで読んで下さった皆様に、心から感謝しております。本当に本当にありがとうございました。本の力は永遠なり。
【山下書店南行徳店】
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