『欲望の資本主義3 偽りの個人主義を越えて』GAFAが支配する世界における人間の自由とは?

堀内 勉2019年08月10日 印刷向け表示
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欲望の資本主義3: 偽りの個人主義を越えて
作者:丸山 俊一
出版社:東洋経済新報社
発売日:2019-06-28
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本書は、NHKの『欲望の資本主義』シリーズを書籍化した第3弾である。

本シリーズはこれまで、資本主義とは何なのかという大きな問題に取り組んできた。今回は、国家の枠組みを超えて巨大化する「GAFA」と呼ばれるプラットフォーマーによる人類支配の懸念や、ブロックチェーン、仮想通貨への期待と不安が高まる中、今一度、資本主義の原点に立ち返り、われわれがこの巨大システムにどう立ち向かうべきかを考える企画になっている。

本書では、以下の5人の専門家が登場する。

GAFAの功罪を独自の視点から語る、異色の起業家スコット・ギャロウェイ。

仮想通貨が世界にフェアな競争をもたらすという夢を語る天才数学者チャールズ・ホスキンソン。

GAFAや仮想通貨など資本主義の今を冷静に分析する経済学者ジャン・ティロール。

文明論的な視点から歴史を読み解き、監視資本主義社会のディストピアを予見する歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ。

新実在論を唱え、社会の根本概念に立ち返って現代社会を読み解く、若き天才哲学者マルクス・ガブリエル。

本書が前の2冊と大きく異なるのは、今回は資本主義そのものを論じるのではなく、資本主義の議論を通じて人間の本質に迫るという、より人間中心のアプローチになっている点である。

人間が自己意識を持ち、「自分とは何か?」を問い質(ただ)すようになった時、われわれは他者とのつながりの拠り所を何に求めるのか。共同体なのか宗教なのか科学なのか、あるいは共産主義のような壮大な社会実験を通じてなのか。

他方、われわれを束ねる何らかの単一の物差しを見出せば、そこからはみ出す者は疎外されてしまう一方で、構成員にとってはそれが自由を奪う束縛になるというジレンマを抱えている。

そうした中で、実は「お金」が人間を共同体の束縛から自由にして、同時に他者とのコミュニケーションを可能にしてくれる重要な役割を担ってきたのではないかという仮説が、この7月に放映されたスピンオフ企画『欲望の貨幣論』につながっている。

ガブリエルに言わせれば、自由とは自らが作り出したセルフイメージに基づいて行動する自己決定能力のことだ。

そして、本書の最後では、共産主義や全体主義が台頭する中で「自由とは何か?」という問題に真摯に取り組んだ思想家として、ハイエクが取り上げられている。

ハイエクは「新自由主義の教祖」として否定的に捉えられることも多いが、論文「真の個人主義と偽りの個人主義」の中で、「経済学の父」アダム・スミスが目指したのは、善人と賢人のみに自由を認める冷たい世界ではなく、すべての人々に自由を認める体制だったと指摘している。

それは、市場の論理が数字の論理となって人間を支配するような世界とはかけ離れた、自由で開かれたものだったにもかかわらず、今日ではまったく逆に解釈されているというのが本書の重要な指摘だ。

本シリーズはこれからどこに向かうのか。人間の「自由」が焦点になっていくのだろうか。

次回作が楽しみである。

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