『忍者学講義』忍者、お主は何者ぞ⁉

東 えりか2020年04月16日 印刷向け表示
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忍者学講義 (単行本)
作者:三重大学国際忍者研究センター
出版社:中央公論新社
発売日:2020-02-06
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「忍者学」は立派な学問である。三重大学では、伊賀地域を中心とした忍者に関する教育研究を推進し、その成果を広く国内外に発信する国際的な忍者研究の拠点として、また伊賀の地域創生に資することを目的として2017年7月1日に国際忍者研究センターを開設し、忍者研究に取り組んでいる。

『忍者学研究』は副センター長で三重大学人文学部の山田雄司教授のもと、文系だけでなく理系、医学系の研究者が一丸となって、忍者・忍術を真っ正面から研究し、現在まで判明した「忍び学」をまとめたものだ。

まずは食品化学の分野から忍者食に迫る。漫画やドラマなどで目にする丸薬のような忍者食。携帯していれば長期間の探査行にも耐えられ、エネルギーの補給となる夢のような食事が本当に存在するのか。

結論から言うと存在する。古くから伝わる忍術書に書かれたレシピ通りに苦労して作ると、意外にも食べられるものが出来上がった。栄養的にも、万能とはいえないまでも、ストレスに効果があることがわかってきた。緊張を強いられる忍者にストレスは付き物。なるほど理にかなった食べ物である。

歴史学から繙くと、忍者の史料は全国に散在していることが判明した。2018年に「全国忍者調査プロジェクト」を立ち上げ、各地の博物館や文書館にアンケートを送り、さらに史料を募集中だ。

近世の身分秩序でいえば「情報探索や奇襲などの特殊任務につく下級武士」ということになる。アンケートによって「伊賀」という名前のついた忍者が徳島や岡山などの各藩と徳川幕府にも存在していたことが判明したのだ。

では有名な「御庭番」は何をしていたのか。ここだけで新しい時代小説が書けそうだ。

運動生理学では忍者の能力を検証する。成長の早い植物の上を毎日飛ぶ、とか水の上を走る、という訓練は本当にされていたのか。忍者歩きの極意を科学で明確に解明していく。

「のろし」は本当に有効か、「火遁の術」の実現性はどれくらいか、毒草や薬草はどれくらい利用されていたのか、世界からNINJAはどれくらい注目されているのか、など研究は多岐にわたり、大真面目に論じられていく。

中世のころから諜報活動をする者の存在は知られているが、戦国時代が終わり徳川幕府のもと、平時の忍者の活動は興味深い。身分は低いがプライドは高かっただろう。そのなかで現代まで「忍術」を継承している人たちがいることにも驚かされた。

忍者は人間の能力の可能性を究極まで引き上げ、ストイックに暮らしていたと信じたい。国際的も昔から注目されているのは、ある意味「日本人」の象徴的存在とみられているからだろう。本書の研究からも、あながち外れていないのでないかと思われる。

地方国立大学の存在意義が問われている昨今、地域に根差し、観光に結び付く研究がこのように行われているのは素晴らしい。忍者とはどのような人たちだったのか、さらなる研究が待たれる。(ミステリマガジン 5月号)

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