『世界一ときめく質問、宇宙一やさしい答え 世界の第一人者は子どもの質問にこう答える』訳者あとがき&内容の一部紹介

2015年11月8日 印刷向け表示
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毎日が夢のなかのできごとではないと、どうしてわかる?
質問─エスター、5歳
回答─ダレン・ブラウン(イリュージョニスト)

まるでほんとうみたいな夢を見て、今もまだ夢のつづきを見ているように思えてしまうことがよくあるね。たしかに目がさめているはずなんだけど、夢のなかで目がさめているのかもしれないとも思えてしまう。そのちがいは、どうやってわかるんだろう? もしかしたら、今、あっというまに目がさめて、ほんとうはこの本を読んでいなかったことに気づくかもしれない──この本はもとからなかったりして!

さて、とりあえず、きみは自分がほんとうにいるということだけはわかるだろう。もしも今は夢のなかにいるとしても、自分の夢を見ている自分が、必ずどこかにいるはずだからね。でも、頭でいろいろ考えてわけがわからなくなる前に、たいせつなことをおぼえておこう。ぼくらがじっさいに知っているのは、自分で見たり聞いたり感じたりすることだけで、それは身のまわりのほんの一部分だけなんだよ(たとえば、となりの部屋で起きていることは見えないし、ほかの人の頭のなかも見えないね)。ぼくらは、自分が知っているほんの少しのことから、ほんとうはどうなっているか見当をつけているにすぎない──だから大まちがいをすることもよくある。

こんどだれかと意見がちがったり、だれかのことをバカだと思ったりしたら、思いだしてほしいんだ──ほかの人もみんな自分が正しいと考えていて、きみが知っているのは、ほんとうのことの半分だけだってことを! きみはたぶん今、夢なんか見ていないだろうけれど、自分が知っているのはほんとうのことのわずかな部分だけなんだって、忘れないことが大事だよ。
 


人間はなんのために生きているの?
質問─ラズロー、5歳
回答─A・C・グレイリング(哲学者) 

たとえば「牛乳や牛肉を得るため」にウシを飼うとか、「羊毛をとるため」にヒツジを育てるという意味では、人間がなにかの「ために」なることはありません。けれども、人間はだれでも目的や目標をもつことができます。そしてその目標を達成しようとしながら生きることで、生きる意味が生まれます。わたしたちはなにかの「ために」ほかの人を利用してはなりません。おたがいが相手を価値のある人間と考えて接し、相手が自分自身やほかの人のためにしようとしているよいことを認めて、尊重しなければなりません。
 


宇宙には行き止まりがある?
質問─ジョッシュ、10歳
回答─ブライアン・コックス教授(素粒子物理学者)

それは重大な問題だ。でもその答えは、「宇宙がどれくらい大きいかさえ、まだわかっていない!」となる。わたしたちから見えているのは宇宙のほんの小さい部分で、ビッグバンの瞬間からすぎた138億年のあいだに、光がわたしたちの目に届いた範囲だけだ。それより遠くは見えていない。見えない理由は、それより遠い場所からやってくるはずの光が、まだ地球まで届いていないからだ。

それでも、見えている部分だけだって、宇宙はとっても広い。そこにはおよそ3500億個の巨大な銀河があり、それぞれに1兆個もの恒星(太陽)がある。この部分は「観測可能な宇宙」と呼ばれていて、直径は900億光年より少し大きい。ただし、宇宙はこれよりずっと遠くまで広がっていることはたしかだ。無限の大きさかもしれない。もしそうなら、想像することさえむずかしいね!
 


お金はどんどん印刷できるのに、どうして不景気があるの?
質問─キャメロン、11歳、マーヤ、9歳
回答─ジョン・ランチェスター(作家)

不景気を終わらせるために政府が印刷するお金を増やして、効果があがることも、ときにはある!

じっさいにアメリカでは今、政府が特別な1兆ドル硬貨を鋳造して、借りているお金をいっぺんに返そうという話が出ているくらいだ!(1兆は、1のあとに0が12個もつく、とてつもなく大きい数字だよ)。

でも不景気の原因は、その国にどれだけたくさんお金があるかではなくて、人々がどれだけお金を使うかに関係しているんだ。人は将来に不安を感じると、お金を使うのをやめて貯金することが多い。みんながいっぺんにお金を使うのをやめれば、会社がものを売って手にいれるお金が減って、働いている人に払えるお金も減る。そうすると働いている人が使えるお金はますます減って、不景気になってしまう。つまり、印刷するお金を増やすだけでは、将来への安心を生みだせるとはかぎらない。

不景気が終わるのは、人々が暮らしに自信をもつようになって、もっとたくさんのお金を使いはじめ、すべてが元気を取りもどすときだ。
 


小惑星が地球に衝突するのをどうすればとめられる?
質問─ポール、14歳
回答─マーカス・チャウン(宇宙の本の著者)

小惑星は、およそ45億5000万年前に太陽系が誕生したときの材料の残りものです。これらの岩のかたまりのほとんどは、火星と木星の軌道のあいだで太陽のまわりをまわっています。それでもときどき二個の小惑星がぶつかって、その一方か両方が、火星と木星のあいだの小惑星帯からはじきだされてしまいます。これらがやがて地球に衝突するコースをとることがあるかもしれません。6500万年ほど前、小さな町ひとつぶんくらいの大きさをしたそのような小惑星が、地球上から恐竜を絶滅させたと考えられています。

まもなく地球にぶつかるという小惑星を発見したとしたら、それをとめる方法はないでしょう。でも、ぶつかるまでに何年かあるなら、コースを変えられる可能性はあります。ただし、ずいぶんむずかしいですよ。まず宇宙船がその小惑星まで飛んでいき、着陸する必要があります。大きい爆弾で小惑星を爆破するというやり方は役に立ちません。爆破しても、大きい一個の小惑星が何十もの小さい小惑星になるだけで、まだ地球にむかって飛んでくるからです!

いちばんよい方法は、宇宙飛行士がその岩の一部を砕き、宇宙にむけて高速で発射するというものです。そうすれば小惑星は、打ちあげられた岩の反動で、反対方向にはねかえるでしょう。銃をうつと、銃弾の反動でうしろにはねとばされるのと同じです。宇宙飛行士たちがこれを毎日、何週間も何か月もつづけていけば、小惑星の軌道がだんだんに変わって、地球をそれていくことになります。
 

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