2016年も残すところあとわずかですね。HONZメンバーが決める今年の一冊を参考に、お正月に何を読もうか悩みますが、それもまた楽しい。
今年の一冊ではないですが、私の今年最も「グッときた」映画は西川美和監督の『永い言い訳』です。映画のために監督自ら小説を書き下ろしました。
主人公は不倫中に、友人と旅行に行った妻を事故で亡くします。長年連れ添った妻ですか、ここ数年は冷え切った関係だっため死を悲しむことができません。そんな中、妻の友人家族と交流していくうちに、夫婦とは、家族とは、愛とは何かを考え、段々と心境が変化していきます。
この映画、役者の演技も素晴らしいのですが、私が圧倒されたのは監督の細部にまでこだわる徹底ぶりです。主人公夫婦の家の間取りが、もうそれは夫婦仲冷えるよなというつくりなんです。映画に図面は直接出てこず、パンフレットに載っていたのですが、玄関からリビングを通らず書斎に行ける(顔を合わすことなく篭れる)、キッチンが閉鎖的(料理中会話なし)、寝室は一つ(生活リズム異なるのに同室はストレス)など。寝室は一つというのがまたミソで、原作では暑がりと寒がりの夫婦がエアコンをつける、つけないの攻防をしています。
他にも小物や映画全体の色調が青に統一されていたり、風景の入れ方やパンフレットの作り方など全てにこだわりを感じます。
一つ一つのシーンが印象的で、観終わったあとは誰かとすぐに感想を言い合いたくなる映画です。(私は最初一人で観に行ってしまったため、2回目を人と観に行きました)登場人物の誰かに感情移入でき、グッとくることでしょう。家族や周りの人を大切にしようと思えます。
それでは今週献本いただいた新刊本のご紹介です。
版元のみなさま、毎度ありがとうございます。来年もどうぞよろしくお願いいたします!