はーい、こんにちは。好評だった箱根本箱に続く、2回目のブラHONZは、本の街・神保町です!
神保町といえば、世界最大の古書街で、たくさんの出版社が集まる、まさに本好きの聖地。第1回の箱根本箱に続き、私・塩田春香と足立真穂が、神保町散策&マンガアートホテル宿泊をレポートします!
――というわけで、やってきました、神保町(私、会社が神保町にあるので、 わざわざ「やってきた」わけではないのですが……)。
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足立とは宿泊するマンガアートホテルで落ち合う予定。それまで一人でぶらぶらと、神保町を歩くことにします。
神保町の歴史をひもとくと、皇居のすぐ北側にあるこの地域は江戸時代、武家屋敷が立ち並んでいたそうです。神保町の名は、この地に屋敷をかまえた旗本・神保家に由来しています。
古書店が集まり始めたのは、明治になってから。現在、書店の数は古書店と新刊書店合わせて200店舗ほど、出版社の数も大小合わせて50ほどあるといわれています。まさに、世界に誇る本の街です。
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神保町を東西に貫く大通り・靖国通りに目を向けると、北側に飲食店が多いのに対し、南側には古書店が立ち並んでいます。なぜ南側に古書店が集まっているかというと、北側は南からの日差しを受けて本が日焼けしてしまうからだとか。
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靖国通りに平行するすずらん通りにも古書店が多く、店先のワゴンや道路脇にまでたくさんの古本が並べられ、読者との出会いを待っています。
すずらん通りの中ほどにある「本と街の案内所」は、小学館の図鑑などを手にとって見ることができる小学館ギャラリーの中にあり、地図をもらったり自分用の散策マップを作成したりもできますよ! 神保町ビギナーの皆さんは、ぜひお立ち寄りください。(ちなみに週末お休みの古書店も多いので、定休日等を確認してからお運びになることをおすすめします。)
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ところで、一言で「古本屋」といっても、中国やロシアなど特定の国のものや、浮世絵や古地図を専門に扱うお店もあり、多様な知識の宝庫が結集して神保町の古書店街を形づくっています。
当然、学者や文筆家の需要も多く、「司馬遼太郎が新たな時代小説の執筆を開始すると、その時代の資料本が神保町から消えた」という伝説も残っています。
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神保町の魅力は、本だけではありません。趣のあるレトロ建築を愛でながら渉猟するのも楽しみの一つ。私が神保町に通っている十数年間でも古い素敵な建物がどんどん建替えられてしまってさびしい限りですが、現役でがんばっている建物もたくさんあります。また、裏路地に入れば老舗の素敵な喫茶店もあり、本の町を彩っています。
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さて、書店以外に神保町で多いお店といえば、カレーと中華料理です。なぜカレー?という疑問には「買ったばかりの本を片手に読みながら食べるのには、スプーン1本で食べられるカレーが最適」との説を聞いたことがありますが、真偽のほどはわかりません。
一方で、中華については歴史的な背景があります。日清戦争後に中国から日本への留学生が急増し、学生街だった神保町界隈も多くの中国人留学生でにぎわいました。中華料理店が多いのは、その名残といわれています。蒋介石、周恩来、魯迅、孫文ら中国の歴史に名を残す面々も、この神保町にゆかりがあるそうです。
立ち並ぶ古書店をひやかしながら、小川町方面にあるマンガアートホテルを目指します。おもしろいのは、古書店なのになぜか骨董なども扱うお店があること。古本の間にこけしが売られていたりします。
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また、すずらん通りにある老舗画材店「文房堂」は、ギャラリーやカフェも併設し、お洒落な文房具も手に入ります。
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そのほか、和菓子の「ささま」、万年筆専門店「金ペン堂」など、魅力的な専門店が多いのも、神保町の奥深さにつながっているのでしょう。
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さて、小川町駅近くにある、マンガアートホテルの入るビルに着きました。4階と5階がホテルです。
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まだ少し早いので、周辺を散歩してみます。神保町からお隣の小川町にかけては、スポーツ用品店や楽器店も多く立ち並んでいて……、あ、以前、足立が取材して記事にした能と狂言が専門の檜書店もホテルのすぐ近くにありました!
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そうこうしているうちに日も傾き、ホテルの前で写真を撮っているところに足立が到着。ようかんの本をつくっているそうで、おやつにようかんをもらいました。せっかくなので、足立のようかんの本も紹介しておきます。
ホテルは足立が予約してくれていました。このマンガアートホテル、じつは足立に聞くまで私は全然知らなかったのですが、ウェブサイトには
漫泊(まんぱく) それは、何かのついでとか 片手間とか 暇つぶしではなく。 ただひたすら、マンガの世界に浸る ”一晩中マンガ体験“です。 ……
とあり、「厳選された5000冊のマンガに囲まれて泊まれるコンセプト型カプセルホテル」。気に入ったマンガは購入することもできるそうです。
さっそく、行ってみましょう。
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フロアは男性が5階、女性が4階。フロントは5階にあります。宿泊料金は曜日などによって変動しますが、この日は1人4800円でした。なお、チェックインは15時、チェックアウトは翌11時です。
アメニティやカードキーを受け取って、女性フロアへ移動します。入り口を入って右手に、洗面所やシャワー、トイレなどの水周りがあり、いずれもさっぱりと清潔。
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そして、マンガに囲まれて泊まれる宿泊スペースが、こちら!
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見渡す限りのマンガの棚のあちこちに、カーテンで仕切られたベッドが埋め込まれています。これはまさに「ただひたすら、マンガの世界に浸る ”一晩中マンガ体験“」を可能にする、夢の城! 『ドラえもん』以外はマンガ禁止、という切ない家庭環境で育った私は、一気にテンションが上がります!! 女性16室、男性19室あるそうです。
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こちらがベッド。金庫と、コンセント2つと照明つき。フリーWi-Fiも。
また、観葉植物の置かれたテラスにはテーブルと椅子もあり、日中くつろいでマンガを読むのによさそうです。
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さて、肝心のマンガです。置かれている約5000点が、読み放題! 自分のベッドに持っていて、寝転んで読むこともできます。また、作品の解説や推薦理由が書かれたカードも添えられています。
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「あ、あれ、英語版だ!」足立の指差す方を見ると、映画化もされて話題になった『大奥』の英語版が。宿泊客に外国の方も少なくないので、外国語版の作品も意識して置かれているようです。そういえば作品に添えられたカードは、日本語と英語で表記されていました。
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女性フロアと男性フロアでは、置かれている作品が異なります。午後7時までは男性フロアに行って、5冊までなら借りてくることも可能。ということで、早速、男性フロアに行ってみることに。
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おお、本棚やベッドのつくりは似ていますが、やはり置かれている作品の傾向が違います。
「うわ、何これ、銛ガール??」「ねえ、なんか男性フロアのほうが……、読みたい作品多くない?」「そうそう~、女性フロアは恋愛モノとか多かったけど、なんかねえ」「絶対、こっちの方がおもしろそうだよ! いいなあ、男性フロア!」
と、なぜか私も足立もこちらのフロアのほうがずっと魅力的に感じられ、5冊に絞るのがとても大変。きっと私も足立も、心に少年(もしくは、おっさん)を住まわせているのでしょう。
男性フロアで私が気になった5冊をご紹介します。
はい、だいぶ偏っています。『銛ガール』は、足立が見つけたのを私が奪い取りました。
そして足立が気になったセレクトがこちら(この時点でまだ読んでないですが)。さぼリーマン? 中卒労働者から始める高校生活?? 選ぶ本の違いが新鮮でした。友達と一緒に泊まって、お互いが読むマンガをセレクトし合ったりするのも、違う世界が開けておもしろいかも?
その後、私が女子フロアで読んだ作品はこちら。恋愛モノとかまったくないあたり、やっぱり私の心には、おっさんが住んでいるのでしょう。
ところで、こちらのホテルでは、食事の提供はありません。外に食べに行く必要がありますが、心配ご無用。周辺にはよさげな飲食店がたくさんあって、どこにしようか迷うほど。
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じつは当初、神保町駅周辺まで戻って食事をしようと足立と相談していたのですが、宿を出てわずが数歩で明かりに引き寄せられる蛾のように、こちらのお店にあっさり捕獲されてしまいました。
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「ああ、写真撮る前にビール飲んじゃったよお!」「肉、やっぱり肉は頼もうよ!」と、取材を忘れて堪能(仕事じゃないから、許して~)。おいしかったです、ビールと肉。
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さて、日も完全に落ち、ホテルに戻り、マンガにまみれマンガに浸る「一晩中マンガ体験」の始まり!
――気がついたら、朝でした。
夢中で読んで、読んで、読みまくり、いつの間にか寝落ち。「ただひたすら、マンガの世界に浸る」というコンセプトどおり、個室ベッドにこもって一言もしゃべらず、黙々と読む。ほかの宿泊者たちも同様に、おしゃべりする人もなく、ただひたすら読んでいたようです。
一晩で読めたのはせいぜい10冊程度でしたが、映像化などで話題になった人気作もおさえつつ、「え?何これ??」とタイトルや表紙で思わず手にとってしまうインパクトのあるもの、一見ジミだけど読んでみると詩情豊かで目が離せなくなるものなど、感性に合う、合わないはありますが、しっかりとキュレーションがなされている作品ばかりと感じました。
くっ、まだ、続き、続きの巻が読みたい! けど、会社行かなきゃ~(号泣)。
でも、私は歩いて行ける距離に会社があるのです! ふだん1時間かけて通勤している身としては、これはものすごくありがたい。いやもうこれ、夜遅くなったとき、無理に家に帰るよりもここに泊まっちゃっうの、アリかもしれない。
だけど、朝ごはんはどうしよう? なんて心配はご無用。じつは神保町界隈は、モーニングが充実した喫茶店も多いのです。目指すは神保町を南北に貫く白山通りにある、CAFE&BAKERY MIYABIへ。
なんか、おシャレじゃないですか? イケてるビジネスマンみたいじゃないですか? 出勤前に、素敵なカフェでモーニングだなんて!!
カードキーをフロントにあるポストに戻し、イケてるビジネスマンのように颯爽と外に飛び出すと、……横殴りの豪雨。ゴオォォォとうなり声を上げる強風に傘を折られそうになりながら神保町を目指すも、足元はずぶぬれ。そ、そういえば、箱根本箱の取材のときも台風で、豪雨のなかを足立と二人で泣きながら美術館の入り口まで走ったことを思い出します。(そういえば本家ブラタ○リも、雨に見舞われることが多いですよね……。)
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やっとの思いでたどりついたMIYABIは、落ち着いた雰囲気の、すてきなお店でした。足立はコンチネンタル、私は和風サラダのモーニングをオーダー。厚切りトーストが載ったお皿もステキで、充実した朝ごはんを満喫しました!
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店を出る頃には、先ほどまでの豪雨はどこへやら。さわやかな青空が広がります。
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そして、足元には白山通り名物?踏みつぶされた銀杏の、強烈な異臭が漂います。
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……ああ、イケてるビジネスマンになるって、なんて難しいの!!
こうして足立も私もそれぞれの仕事へと向かったのです。(完)
――すみません、やっぱりもうちょっと続けます。今回改めて「人に紹介しよう」という目で神保町を歩いてみると、奥深くておもしろい、歴史や文化の香りもする、おいしい食べ物の香りもする、ステキな街なんだなあと改めて実感。
ここで書いたことなど、ほんのわずかな入門編。まだまだ紹介したいことやお店はたくさんあるのですが、最後に、神保町でおすすめのブックカフェを2軒、ご紹介しておきます。
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児童書から専門書まで岩波書店の本をそろえている、コワーキングスペースも併設したブックカフェ。フードメニューもおいしいと評判。ブックトークなどのイベントも多く行われています。
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子どもの本専門店&カフェ。絵本や児童書を約1万2000点揃える。ギャラリーもあり、絵本の原画展などもよく行われています。天井の絵をはじめ、内装もすてきな建物。遠方からわざわざ訪れる方も多いそうです。
――この神保町ブックセンターとBook House Cafe、じつは数年前までカフェスペースのない書店として営業していました。書店だけで生き残るのは難しい時代になったのかな、と思うと複雑な気持ちにもなりますが、本に囲まれた空間でお茶を飲んだりくつろいだりしているお客さんを見ると、これも本との親しみ方のひとつなんだなと思います。
神保町では毎年10月に古本まつりが行われ、道路わきにまでびっしりと古本が並びます。夕暮れ時、裸電球の下で興味のある本を探すのはどこかノスタルジックな気持ちになる、秋の風物詩です。大きなスーツケースをひっぱって来て本を買い漁る人たちを見ると、本を愛する人たちはまだまだたくさんいるんだなと嬉しくなります。
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いろいろな楽しみ方のできる神保町、みなさんもぜひ遊びに来てくださいね!