『女帝 小池百合子』を買ったのは、どういう人たちなのか?

古幡 瑞穂2020年06月15日 印刷向け表示
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女帝 小池百合子
作者:石井 妙子
出版社:文藝春秋
発売日:2020-05-29
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2017年の東京都議選の前に「隠し球」として出版されたのが、小池百合子「ファースト」写真集『小池百合子写真集 YURiKO KOiKE 1992-2017』でした。

そのときのデータからは、写真集としては異例のクラスタが見え、品格のあるステキな年の重ね方や生き方を求める方たちにとっての、ロールモデルとしての「小池百合子」という存在が強く見えてきました。

そして、今。東京都知事選を前にして『女帝小池百合子』が売れています。どんな売れ方をし、どんな方々に読まれているのでしょう。

『女帝小池百合子』は首都圏の一都三県での動きが非常にいいのが特徴です。売上シェアで見ると50%以上を首都圏店舗で売っているということがわかります。*先月ここで取り上げた『FACTFULNESS』だと一都三県のシェアは45%程度まで下がります(日販オープンネットワークWIN調べ)

販売戦略や店頭の在庫も首都圏に寄っているはずですが、都民や近隣の県民の高い興味を感じる数字です。

続いて読者層です。

男女比は男性65%、女性35%。男性は60代以上の購入者が多くなっています。写真集の購入者は70代が多かったのですが、そのときと比べると男性の60代以下の読者が増えている印象があります。

読者の併読本を見てわかったのですが、発売直後ということもあって「月刊文藝春秋」を定期的に購入している方が多くいらっしゃいました。

下記が、『女帝小池百合子』を購入した方が過去1年以内に購入した本の併読ランキングベスト10となります。併読本には政治家の自伝や評伝などが多く並んでおり、政治や経済に対する高い興味を感じます。

また、週刊誌を定期的に購入されているという方も多いようです。

  銘柄名 著訳者名 出版社
1 『反日種族主義』 李栄薫 文藝春秋
2 『ペスト』 アルベ−ル・カミュ 新潮社
3 『独ソ戦』 大木毅 岩波書店
4 『無敗の男』 常井健一 文藝春秋
5 『文藝春秋』   文藝春秋
6 『言い訳』 塙宣之 集英社
7 『日本社会のしくみ』 小熊英二 講談社
7 『猫を棄てる』 村上春樹 文藝春秋
9 『世界のニュースを日本人は何も知らない』 谷本真由美 ワニブックス
10 『上級国民/下級国民』 橘玲 小学館

ではこの読者の併読本から気になる本をいくつかご紹介しましょう。

原節子の真実 (新潮文庫)
作者:妙子, 石井
出版社:新潮社
発売日:2019-01-27
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著者である石井妙子さんに興味を持たれた方も多いようで、既刊が動き始めています。『原節子の真実』は刊行当時新潮ドキュメント賞受賞を受賞した話題作。日本映画史上の大きな謎といわれる原節子の姿を取材により描き出しています。同著者の『日本の血脈』も動きが良くなっています。
 

吉本興業史 (角川新書)
作者:竹中 功
出版社:KADOKAWA
発売日:2020-06-10
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著者は古くから吉本興業の内部で活躍し、月刊誌『マンスリーよしもと』初代編集長も務めた「伝説の広報」。ファミリー企業だった吉本興業はなぜブラック企業との糾弾を受けるまでになってしまったのか。組織を解剖しつつ吉本興業の行く先を占います。
 

〈嘘〉の政治史-生真面目な社会の不真面目な政治 (中公選書)
作者:五百旗頭 薫
出版社:中央公論新社
発売日:2020-03-06
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政治家のつく「嘘」が恒常的な話題になりつつありますが、著者は「絶対的な権力ではないからこそ嘘が必要なのだ」と言います。嘘には害があり、危険な嘘もある。と。政治家が嘘をつくのは今に始まったことではなさそうです。

世界中の政治に「嘘」が蔓延する中、私たちはそれとどう付き合っていけばいいのでしょう。
 

樺美智子、安保闘争に斃れた東大生 (河出文庫)
作者:江刺昭子
出版社:河出書房新社
発売日:2020-06-05
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3月に封切られた「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」。コロナ禍による映画館の営業中止などもありましたが、この時代を生きた人々、話題になった人々の評伝に注目が集まっています。国会議事堂に突入し22歳で亡くなった樺美智子もその一人。伝説となった少女はいったいどういう人だったのでしょうか。
 

ならずもの 井上雅博伝 ――ヤフーを作った男
作者:森 功
出版社:講談社
発売日:2020-05-29
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Yahoo! JAPAN創業者の井上雅博の人生をひもときつつ、創成期からの日本のインターネットの歴史を描いた1冊。一千億という膨大な資産を手にした井上は、自らの事を語ることなく17年にカーレースの事故で若くして亡くなります。Yahoo!・ソフトバンクグループが大きくなっていった歴史が、裏面から読み解けます。

最近の注目本を並べてみたら、どことなく昭和の香りが漂うラインナップになりました。元々の読者層の年齢が高いことも理由でしょうが、若い世代がもっともっと今に興味を持ち、過去から学んでいくべき時なのではないかと思います。

7月5日の東京都知事選に向け、候補者への興味が高まってきています。コロナの危機が続く中どういった選挙戦が繰り広げられるのでしょう。各候補者の横顔を本で知ってみることも政治参加の一つなのかもしれません。

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