2021年 今年の一冊HONZメンバーが、今年最高の一冊を決める!

2021年12月30日 印刷向け表示
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HONZメンバーが選ぶ今年最高の一冊、今年で11回目を迎えるところとなりました。「この記事を読まないと、年を越せない!」といった声はまったく聞こえてきませんが、今年も勝手に開催させていただきます。

さすがにこれだけ長くやっていると、原稿を作成する際にメンバーのフルネームを何も見なくても正確に打てるようになっており、我ながらビックリしております。

ちなみにこのコーナー「今年最も○○な一冊」というお題で、レビュアーそれぞれにタイトルをつけてもらうのですが、身内の認知度が低いのか、「今年一番○○な本」などと覚え違いタイトルで送ってくるメンバーが多発しています。

また、ありがちなのが原稿は送られてきたものの書名が書かれていないケース。刀根明日香、今年の一冊はこの本で合っているか? 

そんなわけで、今年はタイトルを間違えたレビュアーによる「今年最も○○な一冊」から紹介していきます。

アーヤ藍 今年最も「自然界に対するニンゲンの向き合い方を考えさせられた」一冊

作者: 菅沼弘行
出版社: 方丈社
発売日: 2021/6/18
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昨年、拠点を東京から南の某島に移した。そこで身近になった生き物の一つがウミガメだ。だから本書の甘酸っぱいタイトルと可愛い表紙に、惹かれずにはいられなかった。だが、そんな愛らしい見た目から抱いていた期待は、いい意味で裏切られた。

もちろんタイトルのような、ウミガメの生態に関する「へぇ〜!」なポイントもたくさん盛り込まれているが、より焦点が当てられているのは、「ニンゲンによるウミガメ保護活動」の実態だからだ。

卵の移植や子ガメの放流、卵の盗掘防止パトロールといった保護活動が、ほとんど効果をあげていない…どころか、逆効果になっている実態や、結論ありきの「調査」「研究」が引き起こす問題、保護団体間の軋轢など、ウミガメを45年間見つめてきた著者が、世界各地で直面してきた問題について取り上げられている。

「ウミガメを保護しようという考え自体がニンゲンの傲慢で、ニンゲンがなるべく関わらないことこそが保全に繋がるんだ」と著者は本書のなかで強く訴えているが、この視点は、ウミガメにかぎらず、環境保全全般に通じるものなのではないかと思う。

近年、環境問題への社会的な関心が高まっているが、そうした”波”が起きているなかだからこそ、自然界と向き合う姿勢について考えさせてくれる本書をお薦めしたい。

仲野 徹 今年最も「親孝行になった」一冊 

作者: 坂 夏樹
出版社: さくら舎
発売日: 2021/1/9
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同居している89歳になる母親、やや認知症気味になってきているが、本好きなのでけっこう読む。なので、面白そうな本があれば、お勧めすることにしている。といっても、気に入られる率は5割といったところだろうか。そんな母親だが、今年、いちばん興味を示したのがこの本だ。

第二次世界大戦末期の昭和20年3月14日深夜、大阪は大空襲に襲われた。火の海から逃れるために地下鉄の駅に殺到する市民。すでに営業時間外で駅に入ることすらできなかったはずだ。しかし、電車が走り、それによって命拾いをしたと語る人が何人もあらわれた。

はたしてそのようなことが本当にあったのか、それとも都市伝説にすぎないのか?いくつもの証言をジグソーパズルのように組み上げて「救援電車」の真実が明かされる。

そのころ12歳、大空襲を直接経験した訳ではないが、やはり興味があるのだろう。この本を読んだ母親はえらく興奮して大喜び。本を買い足して、近所のおばちゃんたちに勧めまくっていた。数年前に、徹には親孝行をしてもらったことがないなどという不埒な発言を受けてから、積極的な孝行はできるだけしないように努めているのだが、意外なところでしてしまいましたわ。

古幡 瑞穂 今年最も「満ち足りた気持ちになった」一冊

作者: 砂原 浩太朗
出版社: 講談社
発売日: 2021/1/20
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50歳前に妻を亡くし、息子をも事故で失した郡方。寂しさを抱え、静かに生きることばかりをのぞむものの、藩の政変に巻き込まれてゆく…という物語。神山藩という地方の小藩が舞台なので派手な事件が起こるわけではありません。ただ、だからこそより、人生の後半をどう生きるのか、人としての矜持にどう向かうのかといった問いかけが読み手に強く届いてきます。特に同年代の会社員には響くところも多いでしょう。

良い小説を読むと、人物の表情や周囲の景色などが自然と目に浮かぶもの。この作品は情景はもとより、音まで想像できるようでした。静謐で、どこか熱く読み手に訴えてくる作品は今年もっとも満ち足りた読書時間を与えてくれました。年明けには早くも2作目が登場する予定とのこと。ここからの著者の活躍も楽しみです。

鎌田 浩毅 今年最も「地味だが感動的な地球史の」一冊

地球のN極とS極は過去に何回も入れ替わってきたが、その最後の記録が千葉県にある。今から77万年前に磁場が逆転していたことを示す地層で、世界の地質学者の会議である国際地質科学連合が「チバニアン」と呼ぶことを昨年1月に最終承認した。ラテン語表記に従った学術用語で「千葉時代」という意味である。

本書は新たな地質年代「チバニアン」が生まれるまでのドキュメントで、子供向けに書かれた入門書だが、科学の本質を分かりやすく解説したノンフィクションでもある。著者は承認に至るまで尽力した地質学者の茨城大学教授で提案チームの代表を務めた。

地球の歴史は46億年に及ぶが、生物の繁殖と絶滅をもとに大きく時代分けされている。学校で習った「古生代」は生物の95%が大規模な火山活動等で絶滅したことで終了し、「中生代」は恐竜が宇宙から飛んできた1個の隕石衝突で滅びた時代である。

各時代はさらに細分され、代表的な露出する地名で呼ぶ決まりになっている。そして生物の大量絶滅や環境激変などの節目ごとに117の時期に分けられた。たとえば、三葉虫が海中を泳いでいた「カンブリア紀」や、恐竜が陸上を闊歩していた「ジュラ紀」のように、17世紀に近代地質学が誕生したヨーロッパの地名を付けたものが多い。一方、これらの地質時代の中で、まだ命名されていない時代が10ほどあった。

ちなみに、現代は地質時代で分けると「新生代」終盤の第四紀に当たる。258万年前から始まる第四紀は、地球表面を広く氷河が覆った「氷期」と、それが溶けて温暖になる「間氷期」が交互に現れている(鎌田浩毅『地球の歴史』(中公新書)。第四紀の最後の時期に当たり、命名されていなかった地質年代(77万4000年前~12万9000年前)が、チバニアンに決定したのである。

この時期は「ホモ・サピエンス」が生まれた約20万年前を含み、ネアンデルタール人やマンモスのいた時代でもあることから世間の関心も高い。さらに地学的に77万年前は地球上で地磁気の逆転が最後に起こり、気候変動などを知る上でも非常に重要な境界である。

命名を決める最終選考で重視されたのが、逆転の証拠がどれくらい本物かであった。千葉県市原市の地層に含まれる磁気を持つ鉱物は、逆転の事実を明瞭に記録していた。さらに花粉や化石など逆転時期を示す状況証拠が複数の方法で提示され、最終決定の決め手となった。

チバニアンのように科学の世界で日本名が正式に採用されたのは、2016年11月に 原子番号113の元素が「ニホニウム」として国際承認されて以来である。また、地球史の一時代を日本列島の地名が飾るのも初めてで、我が国の地質学が世界的な水準にある快挙ともなった。

今後は教科書や研究論文でチバニアンが国際的な標準層として使われることになる。チバニアン決定のニュース以降、国内外から研究者のみならず多くの一般市民が遠路はるばる地層を見学しにやってきた。

本書はこれから地学を学ぼうとする小中学生にも理解できるように、ポイントが簡潔に解説されている。地質学はきわめて地味な学問だが、若い人たちが注目し我々を継ぐ研究者が続出することを期待したい。「今年最も地味だが感動的な」地球史の物語を、ぜひ楽しんでいただきたい。

刀根 明日香 今年最も「賢くなった」一冊

作者: 伊藤 亜紗,中島 岳志,若松 英輔,國分 功一郎,磯崎 憲一郎
出版社: 集英社
発売日: 2021/3/17
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本書を手に取ったのは、SDGsに興味を持つきっかけを探していた時だ。仕事で必要なこともあり、面白い本を読んでのめり込みたかった。本書は期待を大きく超えて、私の思考の核となり、今年一年いろんな視点で世の中を見させてくれた感謝の一冊である。

本書は、東京工業大学の「未来の人類研究センター」のメンバー5名が日々「利他」について議論して出来た結晶だ。みんな専門分野も背景もバラバラで、「利他」という概念に向けて一人ひとりが旅をするような構成になっている。私も同じように、本書を楽しみながら、自分なりに旅をしてみた。「利他」はどんな人でも受け入れてくれるような器が大きい概念だった。

「利他」はみんなでシェアできる。広くも深くも自由自在に探検することができる。自分の経験を基に考えることができる。その過程は全て大事で、行き着く先は誰も予想できない。すごく楽しい。「利他」についていろんな人と話を交わしてみたい。

本書はあくまで出発点であり、思考の「種」にすぎません。

伊藤亜紗さんが”思考の「種」”と表現しているが、きっと誰もが読んでいる間にふと大切なことに思い当たる。それが本質と呼ばれるものだと思う。本書の力を借りて、考えるのを楽しもう。

東 えりか 今年最も「癒された」一冊

作者: オフィスJ.B
出版社: 双葉社
発売日: 2021/11/16
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うんざりするほどコロナ禍は長引き、先が見えない日々のなかで、実母(92歳)は大腿骨を骨折し、姑(89歳)は癌で大手術が成功したのに他の病気が見つかって呆気なく亡くなり、幼子を抱えた姪は中東の紛争地域で帰国困難者になり、私は読む本読む本が気が滅入る話ばかり…、という欝々していたときにこの本を発見。

小学校の高学年から大学くらいまで、少女漫画に惑溺していた。クラス内でまわってくるから「少女フレンド」も「マーガレット」も「りぼん」も「なかよし」も読んでいたし、日本史も世界史も人間関係も性の悩みもみんな少女漫画から学んだ。

ページをめくるごとに懐かしい漫画家の名前を叫び、ストーリーを思い返す。同時に学生時代の苦い思い出も甦り、いまならもっと上手に対処できたはず、と取り返しのつかぬことに悶々としたりして。

今では電子配信されている作品は多いけど、読めない作品はひときわ恋しい。萩尾望都『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)が衝撃的であっただけに、何も知らずに幸せに漫画に浸りきっていた少女時代が懐かしく、仕事が行き詰ると知らずに手に取って眺めてため息をついている。

首藤 淳哉 今年最も「ご無沙汰だった」一冊

作者: 内澤 旬子
出版社: 本の雑誌社
発売日: 2020/2/13
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今年はとうとうスーツを着なかった。唯一着たのは喪服だけ。それ以外はすべて全身ユニクロで過ごした。スーツを着た時のあの背筋の伸びる感じとはとんとご無沙汰だ。

本書は、メンズファッションウォッチャーの著者が、身近な出版関係の男性たちの「残念な服」をなんとかしようと奮闘する爆笑エッセイである。有益なアドバイスも多く中高年男性は必読だ。なにしろ登場するモデルの変わりようが凄い。高野秀行氏(ノンフィクション作家)のスーツ姿なんてまるで別人。怪しい密売人(Before)とウォール街の金融マン(After)くらい違う。

自分もたまにはスーツできめて見違えるような別人になってみたいものだけど、もうそんな機会はないかもなぁ……とあきらめかけたある日、写真交換アプリで遊んでいた家族がなにやら騒いでいた。スリムな息子の顔と父親の顔を入れ替えたら誰かに似ているというのだ。やがて妻が興奮して叫んだ。「大森南朋じゃん!」

え?俺、大森南朋似なの?やせたら大森南朋なの?なんと!文字どおり別人に変身できるじゃないか。それも大森南朋だぜ!?
そんなわけで、来年は大森南朋になります。やせておしゃれを楽しみます。皆さんもよいお年を!

成毛 眞 今年最も「万能だった」一枚

メーカー: IKEUCHI ORGANIC 株式会社

HONZをやっているといろんな出版関係者と付き合いができる。その中の元Amazonな一人に、いまは名門タオルメーカーで活躍している人がいる。

1年ほど前からタオルのあれこれについてチャットしていたのだが、ボクはサイズ225X225で30番手双糸のタオルケットが欲しいんだよね、と話していた。そんなタオルケットは世の中に存在していなかったのだ。

なんと驚いたことに、半年ほど前のこと、225X225の40番手双糸のタオルケットを試作したので使ってみるかとのこと。いやあ嬉しい。それ以来毎日使っている。

もうね、めちゃくちゃいいよ。巨大なのでどんな使いかたでもできる。夏場はタオルにくるまれてぬくぬく寝ることも。肌寒いときには布団の上にたっぷりと重ねてポカポカなことも。本気で寒いときにはベッドをまるごとくるんで暖かいシーツ代わりとして使うこともできる。タオルはそもそもさらさらもこもこ。暖かくて涼しい。ほんとタオルという素材は知られざるとんでもない寝具だ。タオルそのものは軽いのだが、その大きさをうまく使うと重みも作り出せるのだ。

ついにそれが一般で発売されたという。次は225X225の30番手双糸が欲しい。

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決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!

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