教養とは「ここが今どこなのか」を把握すること
ーーこの読書会の対談って、毎回どれぐらい時間かけてやられたんですか。
高野:3時間ぐらいですかね。
ーー3時間、思い思いに語り合うみたいな感じですか。
清水:です。
高野:用意ドンですね(笑)。
清水:(笑)。その直前は、メールのやり取りもあまりしないようにしてたんです。
ーーああ、話の前には少し距離を置くようにしてたんですね。今日は、失敗しましたかね。楽屋でちょっと盛り上がり過ぎましたからね(笑)。
清水:会うと喋っちゃいます(笑)。
高野:メールでも必要なことだけにして。
清水:「ちょっと事実確認なんですけど」っていうぐらいでね。だけど、そこ深くなっちゃいますね。
高野:そう。で、もうほっとくと延々とやってるんですよ。3時間喋るでしょう? で、終わって飲み会に行って、そこでもまたその続き喋ってるんですよね。
清水:ええ(笑)。
高野:しゃべって、で、飲みながら、「次、何の本やろうか」って話を散々やって、で、家に帰ってからまたメールで、「そういえば」って言って、読書会の続きをメールで延々とやってたんです。
清水:「そのあと調べてみました。こんなことがありました」。
高野:もうよせばいいのに、お互いに。
ーー次の本を決めるタイミングというのは、どういう風に決めていたんですか?
清水:もう、その日の夜の飲み会で。こっちは手駒として候補作をいくつか用意しておくわけです。高野さんの本を読んでる時には次、僕だって分かってるんで。その間に、この本から話をつなげるとしたら何かなというのを2つぐらい用意しといて、高野さんに提案する。ただ場合によっては、高野さんが「じゃ、2つ読んでみる」。て言うこともあるので(笑)。だから、結構本に反映されてなかったものも、いっぱい読んでいますよね。
高野:いっぱい読みましたね。清水さんがいろんな本を薦めてくるので。
清水:いや、興味持ってくれるんで、いろいろ薦めたら全部読んでくれるんです。嫌がってたっていうのは、後でわかりました(笑)。
高野:『列島創世記』なんかも、松木武彦さんの本は何冊かあって、どれも面白いんですよ。だから、どれを取り上げたらいいのかっていうので。
清水:結局、松木さんの本、全部読みましたもんね(笑)。
高野:けっこう読みましたね〜。で、まあ『列島創世記』を取り上げたほうが全体像が分かりやすい。
ーー清水さん、少し本の話を外れてお伺いしたいんですけども、中世の時代や室町時代を研究することの醍醐味って、どういうところにあるんですか?
清水:え~と、それは一生かかって答えを出したいと思います(笑)。でも、高野さんが辺境に憧れるのと限りなく近いと思いますね。現代の私たちとは違う論理で動いてる社会、それの面白さですよね。人は歴史の中に自分と同じものを見つけて、「ああ、同じ苦労をしてるんだな」といって共感するという、それも一つだと思うんですけど、僕の場合はむしろやっぱり異質性みたいなものを追求することが好き。それでいうと室町時代ってやっぱり、常に裏切ってくれますね、こっちの期待を。それがある限り、勉強が面白いというのはあるかもしれません。
ーーそれでは最後に、高野さんの方から読書会全体を振り返った感想をいただけますか。辺境ならびに歴史に関する読書会をやって得られたことって、どういうものでしたか?
高野:いや、あとがきでも触れたんですけど、すごく教養に触れたなってことですね。これまで教養なんてまったく興味なかったんですよ。でも、今まで本を読んでたり、あちこち旅してたいたことは、漠然と経験を積み重ねていただけで、はっきりした像を結んではいなかったわけです。
だけど清水さんと会って読書会ということになると、やっぱり自分も準備していくし、清水さんがきちんと返してくれるわけですね。さらに僕も聞かれたことは、きちんと答えなければいけない。もし答えられなかったら、あとで調べたり。それを8冊も繰り返すと、色々な時代や色々な国がだんだんと網羅されてくるんですよ。
それがマッピングみたいな感じで、そこに自分の経験が落とし込まれていくわけです。すると、X軸、Y軸が浮かび上がってきて、今自分がいるのはこういう地点なんだということがくっきり分かる感じがして、「わっ、これがもしかして教養ってやつなのかな」って、すごく感銘を受けました。
清水:この本は高野さんのあとがきが一番いいんですよ。僕はやっぱり大学生、自分の学生に読ませたいです。すごい良い文章。教養とはなんで必要なのかっていうのを、あんなに分かりやすく書かれた文章はないんじゃないですかね。
高野:電車の中で泣きそうになったって言ってましたよね?(笑)
清水:いや〜あとがき送られてきたのを見て、ちょっとウルッと来ましたもん、本当に。
高野:どうかしちゃったのか(笑)。
清水:ちょっとどうかしてたのかもしれない(笑)。
ーー時間も来ているみたいなので、そろそろ終わりにしたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。