『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』を買ったのは、どういう人たちなのか?

古幡 瑞穂2019年10月15日 印刷向け表示
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トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉
作者:西岡 研介
出版社:東洋経済新報社
発売日:2019-09-20
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HONZメンバーをはじめ、身近なノンフィクション読みから「絶対読んだ方がいい!」とオススメされる1冊が登場しました。ここからのノンフィクション本のアワードやベストセラーに入ってくるだろう1冊、それが『トラジャ』です。

もともと、『週刊東洋経済』に集中連載されていた「JR歪んだ労使関係」をもととした単行本となっており、JR労組に起こった労使問題を中心にその裏側を暴き出したノンフィクション。(この前日譚である『マングローブ』 で著者は講談社ノンフィクション賞を受賞しています。)

『マングローブ』の出版を巡っては雑誌連載時(その当時は週刊現代)がJR東日本の中吊り広告の掲載拒否をされるなど大きな話題となりました。その後を描いたこちらも今じわじわと売れ出しています。

まだ発売から間もないため購買者のクラスタをしっかりみられるレベルに達していません。テーマがテーマだけに団塊の世代が多いかと思いきや40代・50代の出足がいいようです。この読者層はかなりノンフィクション本を読み込んでいるとみられ、短期間に多くの本を購入している方が多いようです。『トラジャ』の購入者がここ3ヶ月に購入した本の併読本ベスト10はこちら。

  銘柄名 著訳者名 出版社
1 『暴君』 牧 久 小学館
2 『独ソ戦』 大木 毅 岩波書店
3 『続昭和の怪物七つの謎』 保阪 正康 講談社
4 『ルポ トランプ王国[2]』 金成 隆一 岩波書店
4 『大審問官スターリン』 亀山 郁夫 岩波書店
4 『ノモンハン責任なき戦い』 田中 雄一 講談社
4 『海峡に立つ』 許 永中 小学館
4 『内閣情報調査室』 今井 良 幻冬舎
4 『つけびの村』 高橋 ユキ 晶文社
4 『新聞という病』 門田 隆将 産經新聞出版

 

暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史
作者:牧 久
出版社:小学館
発売日:2019-04-23
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ダントツに売れていた『暴君』。JR東労組委員長であり、革マル派の実質的指導者とも言われる松崎明。JRの妖怪とも言われ、巨大な影響力を持った男であったこの松崎明の評伝です。なんと読者の半数が購入しているという驚異的な併読率となりました。定期購読者の多い雑誌でもなかなかここまでの数字は出ません。

これ以外にも併読リストには骨太のノンフィクションが勢揃い。注目したい本いくつかを紹介します。

教養としてのヤクザ (小学館新書)
作者:溝口 敦
出版社:小学館
発売日:2019-10-03
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芸能界と裏社会のつながりが話題になったからか、元組長、元●●会系の若頭…といった肩書きを持つ著者が増え、ヤクザ関係の出版が相次いでいます。「あの芸人にも読ませたい」というオビフレーズが踊るこちらは、実際にヤクザに刺されたということでも有名な溝口敦さんと『サカナとヤクザ』で一躍有名になった鈴木智彦さんの集中講義。
 

襲撃 裏社会で最も恐れられた男たち
作者:大下 英治
出版社:青志社
発売日:2019-10-05
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襲撃事件に注目し、その主役たちに直接の取材を行ったのが大下英治の『襲撃 裏社会で最も恐れられた男たち』。こちらも気にしておきたい1冊です。
 

外国人ヒットマン
作者:一橋 文哉
出版社:KADOKAWA
発売日:2019-09-19
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一橋文哉の『外国人ヒットマン』は、そういった襲撃事件を起こす方に注目した1冊。まだ記憶に新しい「王将」の社長射殺事件や「世田谷一家惨殺事件」などの未解決事件の裏には国際的な犯罪ネットワークがあると著者は説きます。独自ルート取材により、実行犯と目される足跡をたどり、アジアにのさばる犯罪組織の実態に迫っています。
 

水道が危ない (朝日新書)
作者:菅沼栄一郎
出版社:朝日新聞出版
発売日:2019-10-11
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未曾有の水害を受け、防災だけでなく「治水」や水道事業にも注目が集まっています。このタイミングで出版された本書は水道の危機をリポートした1冊。水道管は老朽化し、水余りとなっている実態もあると提起します。上水道だけでなく下水道も水道のうち。問題は過疎地だけではないようです。当たり前に存在していた水と安全についてもう一度考えてみる良い時期かもしれません。
 

電源防衛戦争――電力をめぐる戦後史
作者:田中 聡
出版社:亜紀書房
発売日:2019-09-28
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これも今こそ読みたいノンフィクション。スイッチをつければ電気がつくのが当然になっているのが現代ですが、電気をつくることと売ることについては、長い年月にわたって多くの紛争がありました。高度成長期の日本に欠かすことの出来なかったエネルギー、電力がどう作られどう拡大していったのか。それに関わった人物に焦点をあてた戦後史です。

*

災害時に世の中を埋め尽くす様々な思いや意見を見ていると、ファクトに基づく検証と、それを書物の形にアーカイブしていくことの重要性をひしひしと感じます。先人たちの努力も、判断の失敗も、その時代時代に評価は変わっていくでしょう。だからこその時代時代のノンフィクションやルポルタージュの必要性を思うのです。

被害の全貌が未だ明らかにならない台風の大きな爪痕を見ながらそんなことを考えています。とにかく今は大きな被害を受けたJR東日本の一日も早い正常化を祈ってやみません。

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