これから出る本 2021年7月

2021年6月21日 印刷向け表示
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先月のこのコーナーで『SFプロトタイピング』を紹介しましたが、SFを経営に活かすという本の出版が増えてきました。各分野、各国の最新技術を知り未来を予測するためにもノンフィクションの持つ役割が大きくなってくるのかもしれません。

これから出る注目ノンフィクションを紹介していきます。まずは予約ランキングから。2021年6月18日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後変更になる可能性があります)

ブレイディみかこさんの『他者の靴を履く』が注目を集めています。

他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ

作者:ブレイディ みかこ
出版社:文藝春秋
発売日:2021-06-25
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大ベストセラーとなった『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でも登場した「他者の靴を履く」ということをさらに深く考えるための本。多様性が求められる時代をどう生き抜けばいいのか。連載時から注目度の高かった本がいよいよ登場します。              

  銘柄名 著訳者名 出版社
文藝春秋 『他者の靴を履く』 ブレイディみかこ 20210625
東洋経済
新報社
『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン』 ピーター・スコット モーガン 20210625
講談社 『フィボナッチの数学』 中村 滋 20211014
講談社 『アイドルホース列伝 1970-2021』 小川 隆行 20210625
河出書房新社 『一日一考 日本の政治』 原 武史 20210629
NHK出版 『デジタル・ファシズム』 堤 未果 20210810
新潮社 『パンデミック日記』 「新潮」編集部 20210624
KADOKAWA 『NHKスペシャル 戦争の真実シリーズ3
   731部隊の真実』
NHKスペシャル
取材班
20210825
講談社 『多様体とは何か』 小笠 英志 20210715
河出書房新社 『挑発する少女小説』 斎藤 美奈子 20210629

これから出る本リストから注目作品を紹介していきます。

ロボット学者、植物に学ぶ―自然に秘められた未来のテクノロジー

作者:バルバラ・マッツォライ
出版社:白揚社
発売日:2021-07-07
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著者は”成長する植物ロボット”を世界で初めて開発した科学者です。そもそもロボットにするのであれば、もっと動くものを作ればいいのに、と思ったのですが植物は植物なりに別の原理で動いているということ。人間以上に賢くしたたかだというその植物の叡智に学び、斬新なロボットが作られているのだそうです。生物学✕テクノロジーのコラボレーションがどんな未来をつくるのでしょう。注目したい科学ノンフィクションです。
 

Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章

作者:ルトガー・ブレグマン
出版社:文藝春秋
発売日:2021-07-27
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著者、ルドガー・ブレグマンは『隷属なき道』でベーシックインカムを唱え、ピケティに次ぐ欧州の新しい知性とも言われています。近現代の思想は“性悪説”に基づいているが、それを数々のエビデンスで覆していきます。人間は利己的で攻撃的なのか?その論拠とされた実験や、逸話を次々に覆した先にはポジティブな未来が見えてきます。

『FACTFULNESS』は読むと明るい気持ちになる、ということでも多くの人の共感を呼び大ベストセラーになりました。それに続く話題の書となるでしょうか?注目です。
 

アーバン・ベア: となりのヒグマと向き合う

作者:佐藤 喜和
出版社:東京大学出版会
発売日:2021-07-19
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都市に現れたヒグマによる被害が大きな問題になっています。かつて山に住んでいたヒグマはなぜ人の近くに来ているのか、何が起きているのかを探ります。

ヒグマがどういった生活を送っているのか、人間への被害や対立の歴史、農地への出没が増えた時代を経て、市街地への出没が始まったヒグマ。人間はどう向き合っていけばいいのかを専門的に分析、提言した1冊です。
 

奇跡の地図を作った男—カナダの測量探検家デイヴィッド・トンプソン

作者:下山晃
出版社:大修館書店
発売日:2021-07-26
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本の紹介文を読んで、この探検家に興味を持ったのですが、邦訳されている本はゼロ。あのウィキペディアですら日本語ページがありません。トンプソンは北米大陸のおよそ5分の1。日本全土の総面積と比較したらその13倍以上にもなる広大な土地を探査、測量し緻密な地図を創り上げた人物です。異色の業績にもかかわらずそれらは剽窃され、晩年は失意のうちに世を去ったという悲劇の人物です。逝去して150年以上立った後にようやく光を当てられるようになった希有な人物はどんな人生を送り、なぜこの無謀とも言える事を成し遂げられたのでしょう。
 

ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」

作者:平井 一夫
出版社:日本経済新聞出版
発売日:2021-07-13
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企業ものではこちら。最近ソニーについて描いたノンフィクションやビジネス書が増えています。いよいよその再生復活劇を成功させた平井さん本人の著書が登場します。5,000億円を超える大赤字の中からの復活劇、変革を成功させたリーダーの経営哲学とは。
 

亜紀書房のこの翻訳シリーズでは2年前に『黄金州の殺人鬼』が大きな話題となりました。今回取りあげているのはシリアルキラーとして全米を恐怖に落とし込んだイスラエル・キーズの事件。逮捕後獄中死した、今世紀最大のシリアルキラーの実態に迫るノンフィクションです。

7月のぶっちぎりの目玉本は10周年を記念して出版された『決定版―HONZが選んだノンフィクション』でしょう。各レビュアーのオールタイムベストが凝縮された1冊です。本探しのお供にどうぞ。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)

作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!