急転したウクライナ情勢により、世界中が混乱に陥っています。未だ収束に至らない新型コロナウイルス、世界的な物流危機など先が見えない事ばかりが続きます。2月の書店店頭も苦しい状況が続いています。ではノンフィクションではどんな本が売れていたのでしょうか。
日販オープンネットワークWINから2月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2022/2/1~2022/2/28の売上)
ランキング上位は9割が教養新書という結果になりました。なかでも良い動きをしたのが『人類の起源』です。遺伝情報を手がかりに人類の起源を探るという古代DNA研究は、近年の分析技術の進化により大きな飛躍を遂げています。そういった最新の研究結果から見えたことを第一人者が語り尽くすという1冊。
順位 | 出版社名 | 書名 | 著者 |
1 | 潮出版社 | 日本再生へ!「確かな実力」 | 西田まこと |
2 | PHP研究所 | 子どもが心配 | 養老孟司 |
3 | SBクリエイティブ | 発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服 | 岡田尊司 |
4 | SBクリエイティブ | 世界を震撼させた日本人 | 門田隆将/高山正之 |
5 | 講談社 | なぜ、いま思考力が必要なのか? | 池上彰 |
6 | 宝島社 | 証言昭和史の謎 | 別冊宝島編集部 |
7 | 中央公論新社 | 人類の起源 | 篠田謙一 |
8 | 朝日新聞出版 | 第二次世界大戦秘史 | 山崎雅弘 |
9 | 講談社 | 海外メディアは見た不思議の国ニッポン | ク-リエ・ジャポン |
10 | KADOKAWA | 心を鍛える | 藤田晋 |
11 | 小学館 | おっさんの掟 | 谷口真由美 |
12 | 朝日新聞出版 | 音楽する脳 天才たちの創造性と超絶技巧の科学 | 大黒達也 |
13 | 文藝春秋 | 秋篠宮家と小室家 | 文藝春秋 |
14 | 中央公論新社 | 中国哲学史 | 中島隆博 |
15 | 新潮社 | 親鸞と道元 | 平岡聡 |
16 | 講談社 | 宇宙を支配する「定数」 | 臼田孝 |
17 | 講談社 | 数式図鑑 | 横山明日希 |
18 | 中央公論新社 | ブラックホール | 二間瀬敏史 |
19 | エクスナレッジ | シャーロック・ホームズの建築 | 北原尚彦 |
20 | 中央公論新社 | メタ認知 | 三宮真智子 |
他にも気になる新刊がたくさん!2月発売の気になった本を少しご紹介していきます。
旧ソ連で最も安全で進んだ原発と言われていたチェルノブイリ。しかし、原子炉爆発によって歴史に汚点として残る末路を辿ることになりました。事故からすでに36年が経過しますが、ソ連、ロシアの秘密主義もあり全容解明には至っていません。様々な本や研究が出ていますが、これは諸外国での高評価を受けた調査報道。原発の誕生の経緯、世界に広がった放射能汚染、そしてその影響を受けた人々。ジャーナリストの綿密な取材から原子力国家の闇に迫ります。
ウクライナに関して言えば、2月には『国境を超えたウクライナ人』という本も発売されています。東西から国境を侵食された歴史の中で逞しく生きてきたウクライナの人々の物語。どちらも今こそ手にとりたい作品です。
文化にはルーズな文化と、ルールに厳しいタイトな文化という2種類の文化が存在しているそう。それは国々の差を産み出すと同時に時として分断をも産み出すことになります。このロジックをつかって、社会格差や組織内の対立から国際紛争までありとあらゆることを読み解こうとするのがこちら。
著者は比較文化心理学の教授。列に並ぶという行為一つをとっても国によって大きく様相が異なりますが、これを科学的な手法を使って分析しようと試みています。研究によると日本はタイトな方に分類されますが、それ以上にタイトないくつかの国があり、国名を見ると意外な気もします。それらは脅威への対策や人口密度といったことに左右されるのだとか。興味深い研究です。
子どもがピカピカのランドセルを背負って入学した時から、親が直面することになるのがこのPTA問題。役員決めの沈黙や仕事の負荷、それらはまるでホラー小説を語り聞かせられるように先輩ママパパから教えられてきます。
ひょんなことからPTA会長を引き受けた政治学者が見た「自治」について考えた、笑って泣けるノンフィクション。小中学校のお子さんをお持ちのお父さん、お母さん。必読です。
就職フェアでCIAにスカウトされ、対テロ工作員になって世界各地でスパイ活動をする、という映画のような本当の話。彼女はCIAでテロ対策に従事した後はFBIの特別捜査官となります。原著の発売後も大きな話題になっていますが、テロ対策という仕事の裏側に注目されただけではなく、性差別の多い職場で新しい世界を切り拓いていったという姿にも多くの声が集まっています。
CONFLICTEDとは衝突・対立・葛藤をかかえた緊張状態のこと。国際問題から、家庭内や友人間までそういった状況に陥ることは珍しいことではありません。この不可避な状況とどのように向かい合ったらいいのかのヒントに満ちた1冊がこちら。決して「論破」がよいわけではありません。多くの実例研究から導かれた突破法。コンフリクト・マネジメントを学んで現代社会を生き抜きましょう。
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ウクライナ危機がどのように動いていくのか、その後の世界はどうなるのか。まったく答えが見えない中、地政学関連の本やプーチン関連の本が売れています。最新の国際状況を反映した本が出てくるのはもう少し先になりそうですが、世界のこれからを読み解くためのヒントはすでに多くの本で語られています。いい本との出会いがありますように!